浜野製作所のこれらの取り組みに対し、以前から支援を行い2016年に資本業務提携を行ったのがリバネスである。リバネスは「科学技術の発展と地球貢献を実現する」を企業理念として掲げる研究者集団である。全員が研究者であり、科学技術が社会のより広い場所で使われるように「教育応援プロジェクト」「人材応援プロジェクト」「研究応援プロジェクト」「創業応援プロジェクト」の4つの方向で事業を展開している。リバネスと浜野製作所の関係性はこの中の「創業応援プロジェクト」を中心に進められているという。
リバネスの代表取締役 グループCEOである丸幸弘氏は「リバネスは大学などとの関係性でさまざまな研究内容を精査している。その中で『研究成果を世に送り出したい』と考える研究者が起業に進むケースもある。そういう思いを支えるのがリバネスの役割だ。起業し製品化を進めようとすると、プロトタイプを作りたいという要望が出てくる。しかし、リバネスのポートフォリオでは実際にモノを形にするということができなかった。そこで、モノづくりでの支援を浜野製作所に担ってもらうという形で浜野製作所と協業を行うこととした」と考えを述べている。
こうした取り組みを1つの枠組みとしたのが、研究社会を体系的に社会実装まで進める枠組みである「TECH PLANTER」である。これは研究への熱を持った研究者とモノづくりに長けた地元企業や町工場、世界規模のインフラを持った大企業を組み合わせ、新たな技術や研究を世に広げていくという仕組みである。
こうした枠組み作りの中で2016年にリバネスと浜野製作所で資本業務提携を行った。ただ、実際にはそれ以前から丸氏と浜野氏は親交があり、ガレージスミダで活躍するスタートアップ企業についても多くは丸氏からの紹介だったとしている。また、モノづくりの支援については、浜野製作所を中心としつつ浜野製作所の持つ中小製造業のネットワークを生かして進めているという形である。
丸氏は「リバネスとしてモノづくりに長けた日本が取るべき道は、インバウンドグローバライゼーションだと考えている。これは、海外の技術シーズを一度日本に移し、日本で実際の製品やサービスの形を作り、それをグローバルに再展開するというものだ。こうした強みはさまざまなモノづくりを行い、さまざまな企業や技術者、エコシステムなどが存在する日本ならではのものになる」と考えを述べている。
ここまでの取り組みで、モノづくりの流れとして、リバネスの持つ大学など研究領域のシーズから実際にプロトタイプとなるモノを作り、製品企画を作り込んでいくところまでは実現できるようになった。しかし、メーカーとしての役割を担う場合にこの次に大きな課題となるのが「量産の壁」といわれる量産化のノウハウである。
浜野氏は「スタートアップベンチャーなどでモノを作ると、チャンピオンデータでプロトタイプを作り、それをそのまま量産しようとすることなどもある。しかし、現実的には材料のコストが見合わなかったり、数多く均一に作ろうとすると問題が発生したり、量産工程では全く別の問題が発生する。しかし、中小製造業として製造を請け負う立場では、これらの量産化への対応は難しい。そこでこの『量産化の壁』に挑戦するために新たにO2グループとの協業を決めた」と協業について語る。
O2グループは、製造業コンサルティングのO2、設計者教育およびエンジニアリング支援のXross Vate、熟練技術者思考のAI化などを進めるLIGHTz、射出成形金型の設計と製造を行うIBUKIという、製造業および製造支援企業のグループである。協業では浜野製作所とO2との相互出資とし、お互いに関係を強めあった形である。
O2の代表取締役CEO 松本晋一氏は21世紀型の製造業の方向性として以下の5つのポイントがあると主張する。
「資本業務提携の目的は、次世代のモノづくりの在り方を探り、世界水準の中堅企業の実現に貢献することだ。そのための人材育成や支援などに取り組む」と松本氏は考えを述べている。
具体的には「従来は大企業の要望をそのまま受けてモノづくりをしてきた大企業から中小製造業という流れを逆回転し、ユーザーの要望をスタートアップや中小製造業が受けて製品の芽を作り上げ、それを逆に大企業に提案して量産化や世界展開などを進める形を目指す」と松本氏は述べている。
これらを実現するためにO2が量産化に向けたさまざまな支援を行う方針である。松本氏は「新たな3社の枠組みでも生産キャパシティーは内部に保有しているわけではないが、既に存在する多くのEMSとの関係性などをO2では持っている。これらの企業との関係性や、生産委託する際のノウハウなどをO2グループでは保有しているため、量産化で苦しんでいた企業がその壁を乗り越える手助けが可能だ」と語る。
既に浜野製作所とO2との協力に向けての話し合いは1年以上前から行われてきたとし「成果についても早期に出ると考えている」と浜野氏は述べている。
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