三菱自動車は2019年5月9日、東京都内で決算説明会を開き、2019年3月期(2018年度)の連結営業利益が前年度比14%増の1118億円となったことを発表した。
三菱自動車は2019年5月9日、東京都内で決算説明会を開き、2019年3月期(2018年度)の連結営業利益が前年度比14%増の1118億円となったことを発表した。売上高は同15%増の2兆5146億円、当期純利益は同24%増の1329億円と、2015年度以前の業績水準を伺うまで回復した。グローバル販売台数も前年度を13%上回る124万台と好調さを示した。
2018年度業績では、主力地域であるASEANやオセアニアの通貨安などの為替変動が最大の押し下げ利益要素となっており、395億円の影響があった。また、ブランド力向上活動や広告宣伝費用を含めた販売費の増加で120億円、研究開発費の増加で218億円の影響があった。しかしながら、新型車投入や販売網拡充などを進め全地域の販売台数が前年度超えしたことで580億円、コスト低減活動により276億円の利益積み増しを達成している。
同社業績のけん引役となっているのは、ASEAN市場で人気車となっているSUVタイプのミニバン「エクスパンダー」だ。2017年9月からインドネシアで販売開始された同車種は、2018年3月と同年7月で同国の車種別月間販売ランキング首位を獲得。2018年5月からは順次フィリピン、タイ、ベトナム市場に投入され、グローバル市場で13万7000台の販売実績を持つ世界戦略車となった。
2020年3月期(2019年度)の連結業績予想では、売上高が前年比3%増の2兆5800億円で増収、販売台数は同5%増の130万5000台と好調な数値が並ぶ。一方で、営業利益は同19%減の900億円、当期純利益は同51%減の650億円と一転して前年度実績を下回る想定を立てた。
2019年度営業利益見通しの変動要因では、販売面やコスト低減活動によって計340億円の押し上げ効果が発生すると見込むものの、為替変動と研究開発費増加が利益を計598億円押し下げると予測する。この見通しについて、同社会長兼CEOの益子修氏は米中貿易摩擦などを不透明な世界情勢やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)時代の新車開発における研究開発費用の増大が負担となっていることを挙げた。
益子氏は「自動車業界は1年前と比べて2つの点で格段の違いがある。それは市場環境が明らかに悪化していることと、不透明感を増していることだ」と警鐘を鳴らす。2019年度業績で300億円の為替変動による損失を見込むことについても、「米中貿易摩擦は単なる関税問題でなく技術覇権争いの様相を呈しており、この状況はずっと続くのではないか。この足元の状況を見てそれなりにコンサバティブに見た結果」としている。
また、研究開発費が年々増加の一途をたどっていることも同社の業績に重くのしかかっている。益子氏は電動化や自動運転の採用が進んだ最先端のクルマは「プラットフォームそのものが今のクルマと全く違うものになる」との認識を示し、「従来の投資額に比べてすぐに倍になるという現実がある」と語る。
一方で、同社の主力市場であるASEANなどは最先端のクルマよりも手ごろな技術で普及価格帯のクルマが好まれる。同社が注力する領域のクルマ作りと最先端のクルマ作りを両立する必要がある現状に「ジレンマがある」(益子氏)とし、「しばらくの間は我々が得意なところで儲ける」とこれまでの拡大路線から戦略を修正する意向を示した。
この方針は2020年度から取り組む次期中期経営計画「スモール・アンド・ビューティフル」に盛り込まれる予定だ。次期計画について、益子氏は「販売台数の増加を値引きやインセンティブなどでむやみに追い求めず、ルノー・日産・三菱アライアンスの中で1番の利益率になろうという意味」と説明。現在の中期経営計画では2019年度に営業利益率を6%以上とすることを掲げているが、2019年度見通しでは3.5%と達成は困難な状況だ。次期計画では営業利益率の目標を6%以上とする可能性もあるとし、益子氏は「チャレンジングだが十分に達成可能性があると考えている」と語った。
益子氏は事件発覚前に前会長のカルロス・ゴーン氏とも拡大路線の変更について協議していたとし、「(ゴーン氏は)同意してくれていた。(次期中期経営計画の名前である)スモール・アンド・ビューティフルは彼から出た言葉だ」と明かした。
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