今回は、「応用型演繹法」で導き出した「個別の状況に合わせた天気予報にするには」のソリューションについて、IoT活用の可否を検討していきます。
⇒連載「IoTのイノベーションは問題解決から」バックナンバー
前回は「応用型演繹法」を用いて「個別の状況に合わせた天気予報にするには(細かなエリアでの天気予測をするには)」のソリューションを網羅したロジックツリーを完成させました。
今回は、いよいよIoT(モノのインターネット)に絡めて考えていきたいと思います。
ソリューションの内容によってはIoTで実現できるものもあれば、実現できない(やらない方がいい)ものもあると思いますが、それを判断するためには「IoTで実現するとしたらどういう方法があるだろうか?」と、1つ1つに対して問いかけてみることです。IoT以外の方法でもアイデアが生まれるかもしれませんが、ここでのテーマはIoTなので、「それでもあえてIoTで実現するとしたら?」と粘り強く考えることが重要です。
では実際に上記のロジックツリーの右側から順番に選別してみましょう。
「各地における現在の天気情報を取得し、近隣エリアに対して、直前の天気を予測できるようにする」をIoTで実現するには?
→×
これは各地の天気情報を集めればよいので、口コミ情報サイトを作れば解決できそうです。あえてIoTでの実現を考えてみるとどうでしょう……何も出てきそうにないですね。
(天気の変化の前触れ情報から各地の天気を予測する)
「湿度の変化から各地の天気を予測する」をIoTで実現するには?
「気圧の変化から直前の天気を予測する」をIoTで実現するには?
→△
さまざまな場所に細かく気圧/湿度センサーを設定すればIoTを用いたソリューションを開発できそうですね。
一方で、天気の予測自体は他エリアの天気情報が必須ではありませんので、個人携帯用の気圧/湿度センサーと、それをつなげるアプリでもあれば実現できそうでもあります。
「雨雲の変化から各地の天気を予測する」をIoTで実現するには?
→〇
気象衛星の精度を向上させれば細かく雨雲の動きを取得することも可能になりますが、コストがかかりそうです。
あえてIoTでの実現を考えてみるとどうでしょうか。上空の様子を撮影する魚眼カメラのレンズを一定エリアごとに設置する方法がありそうです。一定エリアといえば携帯電話の基地局などが思い付きますね。これらを組み合わせることで雨雲の細かい変化が分かりそうです。
「予測したいエリアの上空で天気が変化した瞬間に、地上の天気を予測する」をIoTで実現するには?
→〇
天気が変化した瞬間を知る方法は、一定エリアごとの上空に湿度や雨量を測る各種センサーを滞在させることになりそうです。気球基地局など事例があるものの、エリア全体をカバーする状態にはなく難しそうですね。しかし先ほどの地上に設置された魚眼カメラの画像認識などで、上空の天気が変化する瞬間を判断することはできそうです。
「気象庁のスーパーコンピュータを高性能のものにする」をIoTで実現するには?
「現在よりも、さらに優秀な、他で使っているコンピュータを使用する」をIoTで実現するには?
「グリッドコンピューティングを活用し、多くの民間コンピュータに協力させる」をIoTで実現するには?
→×
これらは単なるIT強化にすぎないので、さすがにIoTに絡めた答えは無さそうです。
「天気予報に使用する情報源の数を圧倒的に増やす」をIoTで実現するには?
→△
気象レーダーや各地の気象予報用のセンサー(温度計・風速計・雨量計など)を爆発的に増やすというのが単純な方法ですが、コストが膨大になりそうです。しかし、IoTの活用で考えれば、先ほどの個人用センサーやカメラなど、ここまでで出してきた方法などを組み合わせることで情報源にできるかもしれませんね。
「現在のセンサーの品質を上げて情報の精度を向上する」をIoTで実現するには?
→×
これは通常の技術向上ですね。
「天気予報に使用する情報の種類を広げる」をIoTで実現するには?
→△
各地に設置された監視カメラなどの空の映像や口コミ情報などで、今の天気予報に活用していない有効な情報があれば、IoTも含めて収集することはできそうです。その分コンピュータの高性能化も必要になりそうなので△です。
いかがでしょうか。幾つかはIoTにつなげることができそうですね。まずは全てのソリューションを網羅し、次にIoTという特定のテクノロジーでの問題解決方法を考えることで、その技術を活用する意味が明確になります。また、拙速にソリューションありきで決め打ちしてしまうのではなく、このように多数の選択肢から一番良いものを選択するのであれば、その効果も期待できるのではないでしょうか。
今回は既に存在している技術を用いてIoTの実現方法を考えましたが、実は、それだけでは不十分です。急速に進化している技術のスピード感も踏まえてソリューションを考えなければなりません。次回はその点を踏まえて解説します。
2000年にVSNに入社。インフラエンジニアとしていくつものプロジェクトに参画。VSNの“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」の構想メンバーであり、一流コンサルタントより問題解決手法の教示を受け、多くの問題解決事案に携わる。派遣会社でありながら、担当した事案には、数億円規模の売り上げ向上につながった例も。
現在は、同社「経営イノベーション本部」にて今後の事業の根幹を担うVIをさらに加速させるべく、事業計画の立案や浸透・推進を行う。
株式会社VSN https://www.vsn.co.jp/
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