リテールAIカメラの開発で特筆すべきなのは開発期間の短さだ。Retail AIは国内に約50人、中国に約300人のエンジニアがおり、製品開発から試作、量産に至るまで中国・深センを活用した。2018年6月末に製品企画を終了して深センでの開発を開始し、同年12月末には初期ロットの量産を完了できた。「当社が直接、深センにあるスマートフォン開発企業と交渉した。極めてスピード感の高い開発ができたと感じている」(松下氏)という。
新宮店への導入分を含めたリテールAIカメラの初期ロットの生産規模は2000台で、1台当たりの価格は1万数千円となる。トライアルは、2018年2月にアイランドシティ店をスマートストア化した際に既存のスマートフォンをAIカメラ化したが、そのコストはリテールAIカメラの初期ロットより安価だったという。「スマートフォン版は、フリーズや無線通信のエラーが起こるやすいなど課題が多く、運用コストも掛かっていた。リテールAIカメラは、小売業向けに特化することで運用コストを極力抑えられるようにした。また、今回の初期ロットはいろいろ試せる高機能版になっているが、2019年度内には普及価格版を3万台規模で量産する計画だ。その価格は、スマートフォン版より安価に抑えられるだろう」(松下氏)という。
トライアルは220店を展開しており、2019年度内をめどにリテールAIカメラの導入を進めて行く考え。他社への販売も進める予定で「既に数社から引き合いがある」(永田氏)という。また、他社に展開する上でのビジネスモデルとしては「売り切りは難しい」(松下氏)とした。永田氏は「国内の小売業全体で46兆円規模のムダムラムリがあるといわれており、これらの解消につなげることでマネタイズしていきたい」と述べている。
会見後には、模擬店舗を使って、リテールAIカメラによる来店客の状態や商品の認識、来店客の認識結果と連動してデジタルサイネージへの商品提案CMの表示といったデモを披露した。
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