福岡県を中心に大型スーパーマーケットを展開するトライアルホールディングスが、子会社のRetail AIが独自に開発した「リテールAIカメラ」を披露。併せて、トライアルのフラグシップ店舗である「メガセンタートライアル新宮店」(福岡県新宮町)にリテールAIカメラを1500台導入してスマートストア化すると発表した。
福岡県を中心に大型スーパーマーケットを展開するトライアルホールディングス(以下、トライアル)は2019年4月15日、東京都内で会見を開き、子会社のRetail AIが独自に開発した「リテールAIカメラ」を披露した。併せて、トライアルのフラグシップ店舗である「メガセンタートライアル新宮店」(福岡県新宮町)にリテールAIカメラを1500台導入してスマートストア化し、同年4月19日にリニューアルオープンすることも発表。「スマートストア化などによって、同店のこれまでの年間売上高60億円を将来的に100億円まで伸ばしたい」(Retail AI 代表取締役の永田洋幸氏)という。
トライアルは、2018年2月に日本初のスマートストアとする「スーパーセンタートライアル アイランドシティ店」を、同年12月に夜間無人運営が可能な「トライアル Quick 大野城店」をオープンするなど、小売店のスマート化を推進している。Retail AIは、小売店のスマート化に必要なAI(人工知能)の開発に特化する形で2018年11月に設立された。
永田氏は、国内の小売業がさまざまな課題を抱える現状を指摘する一方で、「AIなどの導入によるデジタル変革で、Eコマースでは実現できないリアル店舗の価値を生み出せる」と強調する。実際に、トライアルの店舗の来店客の8〜9割は、あらかじめ欲しい物が決まっている「計画行動型」ではなく、興味のある商品分野のコーナーなどを見て回ってから購入する商品を決める「非計画行動型」だった。「リアル店舗は、来店客に欲しい物を気付いてもらうメディアとして極めて重要であり、Eコマースでは代替できない。そして、Eコマースと同様にデジタル化することで、さらなる価値を創出できるだろう」(同氏)。
今回のリテールAIカメラは、小売業向けにAIを民主化することを目指して開発された。Retail AI 取締役CTOの松下伸行氏は「開発する際に重視したのは、導入費用が高くならないことだ。スマートフォン向けにコモディティ化した技術を活用しつつ、小売店への導入に必要になる機能を集積した。また、棚前に来店客が何人いるのか、棚からどの商品を取ったのかといった一般的なAI機能は、エッジ側となるリテールAIカメラで処理できるようにした。高度な分析機能を利用するときだけサーバやクラウドを使うので、ランニングコストも電気代だけで済むようになっている」と説明する。
リテールAIカメラは、1300万画素のCMOSセンサーと撮影した映像のAI処理を行うためのAndroidベースのシステムから構成される。通信機能はWi-FiとBluetoothの他に有線LANを備える。「例えば新宮店のように1000台以上導入する場合、通信の全てを無線で行うとエラーが頻発する。そのために有線LANのインタフェースを設けた」(松下氏)という。これらの他、電力を供給するマイクロUSBと、映像出力のためのHDMIも搭載している。商品名から、機能はカメラだけに絞り込んだように思えるが、実際にはデジタルサイネージなどに広告を表示するためのセットトップボックスとしての機能も兼ね備えている。
外形寸法はスマートフォンよりは小さく、商品棚にある値札レールに取り付けられるように設計されている。AI機能は、対象が人か棚かで大まかに分けられる。対象が人の場合、来店客が手ぶらか、買い物かごを持っているか、カートを使っているかといった人の状態や、人の数を見分ける。「リテールAIカメラは個人情報レベルまで踏み込まないようになっている」(松下氏)。対象が棚の場合は、欠品検知に加えて、個別の商品認識が可能になっている。松下氏は「現在認識可能な商品は飲料を中心に50〜100種。2019年夏までに数百種まで増やしていく。今回1300万画素のCMOSセンサーを採用したのは、この商品認識を実現するためだ」と述べる。
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