変更理由の1つとして挙げるのが「年々高まる難易度とそれに合わせて増大する開発規模」である。デベロッパー部門、特に2014年に発足したアドバンストクラスについては、毎年新たな技術導入や難所の追加が行われていることもあって開発規模が拡大している。その影響もあってか、当初デベロッパー部門の4割近くを占めていたアドバンストクラスは、2018年は15%以下にまで落ち込んでいる状況だ。
とはいえ、アドバンストクラスの参加チームを増やすために難易度を下げる形で変更を行うのは本末転倒だ。そこで「難易度を保ちながら物理的な開発工数を減らす」(星氏)ことを目的に、2つのコースを左右反転のほぼ同じ設定することに決めたという。
もう1つの変更理由は「一方のコースのリタイアで競技成績が悪くなる」ことへの対応だ。ETロボコンの活動は、春ごろから地区大会やチャンピオンシップ大会が行われる秋まで約半年を費やすことになる。企業チームの場合、就業後の自己啓発活動としてETロボコンの開発を行っていることも多い。そんな手間暇を掛けた活動にもかかわらず、LコースとRコース、両方の走行がうまくいかないと満足のいく成績にならない。実際に、プライマリークラスの地区大会の結果を見ると、片方のコースだけ失敗して中位に甘んじているチームが全体の30%強に上っている。
そこで、2つのコースのうちベストタイムを競技成績とすることで、半年の成果が無駄にならないようにした。星氏は「例えば、Lコースは堅実に走行してまず結果を出し、Rコースでは攻めの走行を行うといった戦略も可能になる」と説明する。
ETロボコンにおける今回の方針変更は、企業チームの参加減少が背景にある。もともとは学生チームより企業チームの参加数が多く、成績も企業チームが圧倒していたが、2018年はほぼ同数となり、チャンピオンシップ大会の表彰も17のうち13で学生、産学連携、学校関係チームが受賞した。星氏は「企業に所属する社会人が、本業が忙しくて参加できないのはある意味でいいことだ。しかし、近年の働き方改革によって、企業におけるETロボコン活動で一般的であろう、就業後に社内でETロボコンの開発を行うことが難しくなってきているという現実もある。そこで、物理的な開発工数を減らすことによって参加しやすい環境を整えたいと考えた。また、ベストタイムにしたのは、もともとのETロボコンへの原点回帰を図るとともに、参加チームにきちんと成績を出してもらって成功体験をしっかり得てもらいたいという思いがある。人材育成という意味で、やはり成功体験は重要だからだ」と強調する。
なお、ETロボコンの活動が就業後に行うのが一般的という課題についても「人材育成と教育機会の創出という価値を企業側に認知してもらうことで、就業時間内の業務として行えるように働きかけていきたい」(星氏)考えだ。例えば、日立グループのように、1週間につき6時間など、業務としてETロボコンの活動を行えている場合もある。
今回の施策によってETロボコン参加のハードルを下げ、デベロッパー部門を中心に企業チームの参加数を増やしたい考え。2018年の参加チーム数は318だったが「2019年はこれまでで最高の約360のラインを目指したい」(同氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.