日本製造業の逆転シナリオは“脱自前主義”、「ものづくり白書」の提案ものづくり白書2018を読み解く(後編)(3/6 ページ)

» 2019年02月14日 11時00分 公開
[翁長 潤MONOist]

日本の製造業における品質管理問題の顕在化

 日本の製造業は「TQC(Total Quality Control)」に代表される徹底したカイゼンや擦り合わせ活動を通じて、顧客ニーズに即した高品質な製品を追求してきた。このような現場の努力により「日本の製品は非常に高品質である」という支持や評価を受けてきた。引き続き、多くの日本企業の製品は、世界で高い信頼を得ているが、現場を支える技能人材などの人手不足や第4次産業革命の進展などによって、日本製造業を取り巻く環境変化が顕在化している。その中で、品質管理を含めたものづくりの在り方そのものも変化しつつある。

 2017年10月以降、多くの製造業が現場力の強みとして認識している「品質管理」の分野において、製品検査データの書き換えなどの不正事案が複数発覚した。供給先も含めた当事者における安全性検証が最優先課題であり、早急な対応が求められる。その上で、今回の一連の事案を踏まえ、産業界は、品質保証体制の強化が、企業の競争力に直結する経営問題であることを強く認識する必要がある※)

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 こうした問題意識の下、経済産業省は、品質保証体制の強化に向けた産業界による具体的なアクションを多面的に後押しすべく、2017年12月に「製造業の品質保証体制の強化に向けて」を公表した。

 品質保証体制を強化するには、デジタル技術の積極的な導入や品質データの共有など「ウソのつけない仕組み」を構築することが重要だ。2017年10月以降に発覚した一連の事案も未然に防止できたかもしれない。具体的には、例えば、ロボット、IoT、AIなどを活用した、検査結果のデータ化の見える化などを含めた検査工程の自動化が対応策の1つとして考えられる。

photo 図3:製造業の品質保証体制の強化に向けて(2017年12月22日公表)(クリックで拡大)出典:2018年版ものづくり白書

 今回の事案により、製造業の経営にとって品質問題がどれだけクリティカルであるか、という点は明確になったと思われる。形や道具だけをそろえれば済むといったことではなく、企業がどれだけ腰を据えて、信頼性の高い品質保証体制の構築に向けて取り組むかが鍵を握る。

 品質管理の重要性を経営層が的確なガバナンスの下で位置付けるとともに、検査工程の自動化やトレーサビリティーシステムの積極的活用、品質データ共有などの取り組みも含めて、組織として品質が担保される仕組みを経営者主導で構築することが求められる。一連の不適切な事案が繰り返されることのないよう、産業界の経営トップのリーダーシップが期待される。

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