まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年12月〜2019年1月のサブテーマは『中小企業におけるVR活用の現実と理想のカタチを模索する』です。
まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年12月〜2019年1月のサブテーマは『中小企業におけるVR活用の現実と理想のカタチを模索する』です。
皆さんこんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。中小製造業での3D化とIT化が徐々に進みゆく中、自動車や産業機械などの大手メーカーでは、さらなる設計効率化と作業の安全性向上を図る目的で「VR(バーチャル・リアリティー)」を導入する企業が増えています。さてVR導入の成果はどんなものなのか、それは中小製造業でも活用できるものなのか……。
今回のサブテーマ「中小企業におけるVR活用の現実と理想のカタチを模索する」では、中小製造業の未来のために製造現場におけるVRのメリットを考えていきます。
皆さんがVRと聞いてまず思い浮べるのは、自動車運転免許の教習や飛行機の操縦訓練などで使われるシミュレーターや、ゲームや映像作品といったエンターテインメント分野のコンテンツではないでしょうか。
私が仮想空間の世界に初めて深入りしたのは2006〜2007年ごろのことで、それは「セカンドライフ(Second Life)」(リンデンラボ)というオンラインゲームでした。オンラインゲームと言ってもその中身はMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)ではなく、自分の3Dアバター(自分の分身キャラクター)を使って、仮想社会の中で現実と同じような生活をただ営むというものです。実在する企業や店舗、大学のキャンパスがセカンドライフの中にも存在しているので、仮想社会の中での生活なのにやけにリアリティーがありました。
さらに驚くべきことに、商品を作って売るとか不動産売買をするなどでセカンドライフの中でビジネスができるだけでなく、そうして得た収益を、なんと米ドル経由で日本円に換金して現金化することまでできたのです。“仮想社会での経済活動で得た成果(収益)をそのまま現実社会で生かせる”などというシステムは前例がありませんでしたから、当時を振り返ると「セカンドライフのブームがあと10年遅かったら、VR技術の展開は今とは違ったものになっていたかもしれないな」と思うくらい、時代を超先取りしたゲームだったのです。
そんな画期的なゲームが爆発的なヒットに至らなかった理由には諸説あるようですが、当時のネット回線やPCのグラフィック性能の事情もさることながら、「デジタル3Dコンテンツ」というモノが世間に馴染んでいなかったことが、大きな一因ではないかなぁ……とみています。
3D映画「アバター」の世界的ヒットを受けてか、世間に「猫も杓子も3D!」「これからは3Dの時代ですよ!」という風潮が生じたのが2010年ごろで、その頃からVR機器の開発も時流に乗りはじめ、従来の「見るもの。体験するもの」から「体感する。実感するもの」へと進化しました。3D映画「アバター」のキャッチコピーも「観るのではない。そこにいるのだ」でしたね。これをあらゆる場面で体感できるツールが、現在のVRシステムというわけです。
今ではエンターテインメント分野にとどまらず、自動車や不動産などの販売や、建築・建設業界、それから旅行・観光業界にまでVR市場が拡大、急成長を遂げていますが、多くは一般消費者に向けたもので、例えば、「商品やサービスの使い心地を仮想空間で確かめていただき、購入の判断をしてもらう」というアプローチツールとして活用されています。この使い方ならば製造現場での活路もあるはずで、ここ最近、ようやくVRと製造業が結び付きました!
そこで次回では、製造現場にVRを導入することで何が変わるのかを考えていきましょう。(次回へ続く)
藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)
長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。
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