ファーストリテイリング グループ執行役員 神保拓也氏は2015年の段階でグループの物流の仕組みが限界に達していたと指摘する。「物流領域についてはパートナーに丸投げしている状況で、そもそもグループ内で何が起こっているのか把握できていなかった。倉庫の能力を超えた状況が生まれてモノがあふれる状況が頻発する一方で、納期回答などもできない状況が続いていた」と神保氏は当時の状況を振り返る。
さらに「当時の混乱を物流部だけで解決しようとしており問題の根を深くしていた状況があった。さらにグループ内でも物流の全体像を描けておらず、その場その場でパートナーに無理なお願いを繰り返すことになり、結果的にパートナーからの信頼度も下がり、混乱を広げる要因になっていた」と述べる。
これらを解決するために取り組んだのが「物流改革」である。2016年9月から取り組みを開始。フェーズ1として、まずは物流部を解体。グローバルサプライチェーンマネジメント部を新たに立ち上げ、物流だけでなく企画や生産、販売まで総動員で課題解決に取り組める体制を作った。「物流の問題は物流だけでは解決できない。川上の企画や生産、川下の販売とすり合わせて最適化を図る必要があった」(神保氏)。
さらにフェーズ2として、「現場、現物、現実」として全ての倉庫に経営幹部が訪問し本質的課題の把握に努めた。その中で本質的な課題として、以下の4点があることに気づいたという。
「販売に連動しない入庫については、ヒートテックの例がある。ヒートテックが売れるのは秋口以降となるが、当時は工場で作ったものがプッシュ型で販売側に届けられていた。そのために5月くらいに日本に入庫され、5カ月以上眠らせる状況だった。これが倉庫の収納量を圧迫するだけでなく、無駄な倉庫費用につながっていた。これを賃料の安い生産国側に新たに倉庫を設けることで、コスト面など物流全体で最適なシステム化を実現できるようになった」と神保氏は課題解決の例を紹介する。
そして、フェーズ3として、物流パートナーと信頼関係を再構築し新たな体制構築を進め課題解決を実現した。具体的には以下の4つの点に取り組んだという。
神保氏は「信頼関係が低下していた中で改めて物流パートナーとの契約も一から見直し、ビジョンを共有する形で新しいスタートを切った」と述べている。
これらの取り組みを経る中で「実際に現場に入り、人手で改革を進めてきたからこそ得た学びがある」と神保氏は述べる。
「1つは、人海戦術では限界があるという点である。2つ目が物流をコストセンターと考えがちだが、それでは状況はよくならない。プロフィットセンターとして位置付け、物流がより高度化することで得られる価値を企業としての強みとして打ち出せるようにする。物流をプロフィットセンターとすることが重要だと考えた」と神保氏は考えを述べる。
これらの考えから今回のダイフクとの提携による「世界最先端技術を用いた、進化し続ける、超省人アパレル倉庫」に取り組んだという。そのパートナーとしてダイフクを選んだ理由として神保氏は「パートナー選定については5つの条件を定めた」とする。5つの条件は以下の通りである。
神保氏は「われわれは、ベンチャー企業なども含めて世界中の企業に会い、パートナー選定を進めたが、最終的に5つの条件を満たすことができたのがダイフクしかなかった」と述べる。こうしていよいよ世界最先端の自動倉庫実現への取り組みが始まった。
前編では、ダイフクとの協業の概要とファーストリテイリンググループの物流改革への取り組みを紹介した。後編では、全自動化に突き進むUNIQLO CITY TOKYOの倉庫での取り組みの内容を紹介する。
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