三菱電機の小平氏は、日本のロボット産業が中国への輸出を中心に好調なことを紹介。国内におけるロボットの生産額は長らく5000億〜6000億円だったが、2018年は1兆円に達する見込みだ。世界全体に対する日本のシェアも50%以上を維持している。
しかし、日本のロボットメーカーが優位性を持つ技術は、半完成品であるロボットを開発するためのものであり「今後の国際競争力を考えると、ロボットシステムや生産システムを構築するロボットシステムインテグレーターの技術が重要になる」(小平氏)という。そのため、日本ロボット学会の中で、国内ロボットシステムインテグレーター間の連携を推進するFA・ロボットシステムインテグレータ協会を2018年7月に設立した。小平氏は同協会の参与を務めている。設立時の傘下企業数は約120社だったが、現在は約140社まで増加している。
実は、2018年に1兆円というロボット市場だが、ロボットSIの市場はこれよりもはるかに大きいという。小平氏は「ロボットのSIによって構築する生産設備の価格はロボットの3〜20倍になる。そして、さまざまな現場に合わせ込むためのノウハウは、ロボットシステムインテグレーターに残る。これを実際の価値に変えていくためには、中小企業が多いロボットシステムインテグレーターがまとまって業界意志を確立するための協会が必要になると考えた」と強調する。
しかし、立命館大学のロボティクス科をはじめとする機械工学を学ぶ学生が、ロボットメーカーではなく、ロボットシステムインテグレーターで働くことを望むかというと現状はそうとはいえない。
まず給与については「もうかる会社ではないのが実態。ロボットシステムインテグレーターにお金がしっかり落ちる構造が必要だ」(小平氏)という。
また日本国内では、ロボットシステムインテグレーターというよりも旧来の“設備屋さん”のままで、特定の顧客から注文を受けてカスタマイズの多い生産設備の構築を手掛けることが多い。小平氏は「あうんの呼吸で仕事ができる一方で、契約内容が甘いので、コストを被ってしまったりする。顧客にぶら下がるのではなく、自身で看板を出して独立企業としてやっていく必要がある。独立企業としてのポジションを確立している欧州のロボットシステムインテグレーターと異なるところだろう」と述べる。
こういった契約内容の甘さへの対策として、FA・ロボットシステムインテグレータ協会はプロセス標準を策定した。
さらに、協働ロボットが登場するなど、ロボットシステムインテグレーターの担う業務は拡大し続けている。「出来上がったシステムの合理性を裏付ける科学が足りていない。そこは大学での研究と両輪で積み重ねていく必要があるだろう」(小平氏)としている。
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