2017年、Armはこんなスライド(図3)をリリースしており、2018年第1四半期の投資家向けスライドでもまだこれは健在だった(もっとも“Generate $600M annualised free cash flow”という文言が、“Generating profits and cash to be reinvested”に変わったあたりは大人の事情であろう)。
しかし、それよりも興味深いのは、その前にIoTのSoftware and Servicesというスライド(図4)で、Mbed Cloudの位置付けを“OEMパートナーの選択肢の1つ”としていることだろう。「WISE-PaaS」を提供するアドバンテック(Advantech)は、Mbed Cloudのパートナーであるが、同社は同時にAzure IoTの認証パートナーでもある。それもあって、最上段にはAzure IoTとMbed Cloudの両方が並ぶという具合になっている。もちろん、現実問題としてはそうなるのは当然で、あとは(アドバンテックの)顧客が選ぶということになるわけだが、Armの投資家向け資料でこれを出してくるあたりは、Arm自身はMbed CloudをAWS IoTやAzure IoTに負けない規模に仕立て上げるというよりは、「必要ならばAWS IoTやAzure IoTの代替ソリューションを提供できます」という程度に留めている様に見受けられる。
では、図4の左側で一番大きなシェアを占めるITサービスのどこで稼ぐのかというと、それこそトレジャーデータの様なクラウドサービスの上で動くアプリケーションを増やして行き、そこで稼ぐという方向性に変わりつつあるのではないか、というのが筆者が率直に感じた印象である。そう考えると、2018年4月23日のMbed CloudとWatson IoTの協業も理解しやすい。
もっともこのあたり、図4のタイトルにもあるように、新しい収益源の獲得に向けていろいろ投資を行っているという段階だけに、まだ模索中という可能性も捨てきれない。例えば、Mbed CloudがWatson IoTに統合されるなんてこともあり得るだろう(逆にWatson IoTをMbed Cloudに統合、という可能性もないとは言い切れないが)。このあたりのかじ取りをしているのがまさにArmのパテル氏なわけで、2018年10月のArmの年次イベント「Arm TechCon」でどんな方針が公開されるのか、楽しみにしたいと思う。
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