慶應義塾大学は、富士通と共同で診療支援のためのAI技術を開発した。医師の所見に機械学習を適用して、入院や手術、他科への依頼などの対応が必要な症例や治療の優先度を分類する技術だ。
慶應義塾大学は2018年7月31日、診療支援のためのAI(人工知能)技術を開発したと発表した。同大学医学部 准教授の洪繁氏らと富士通が共同で行った。
今回開発された技術は、医師の所見など文章形式のデータ(テキストデータ)に自然言語処理技術で前処理を施し、そこに機械学習を適用して、入院や手術、他科への依頼などの対応が必要な症例を分類する。実際に、放射線科の医師が読影した画像検査報告書に同技術を適用したところ、入院依頼が必要な症例を高精度に分類できた。
技術の内容としては、意味を持つ最小単位でテキストデータを分割する「形態素解析」と、データを扱いやすくするために表記や形式を統一する「データクレンジング手法」により、医療分野特有の表記ゆれに対応した。さらに、文章の係り受け関係から症状の有無を判断し、そこから説明変数としてキーワードなどを抽出した。
次に、これらの手法で前処理した医師の所見と、入院依頼についての医師の対応に機械学習を適用。これをもとに、新たな症例データに対して、医師の対応が必要かを分類する学習済みモデルを開発した。
今回の成果を応用することで、検査結果や検査報告書が出た時点でAIが緊急性を分析し、治療を優先すべきケースを担当医に通知するといった診療支援が可能になる。また、対処を要する状態の患者に適切な対処がなされていない場合、それを検出して、医療安全へと応用することも検討している。
今後、同大学医学部と富士通は、機械学習の精度をさらに高め、医療現場での実用化に向けて検証していく。並行して、学習済みモデルをAPI化し、電子カルテシステムとの連携を図る。
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