長谷工コーポレーションがICT活用とオープンイノベーション推進の方針について説明。3Dデータを基に設計施工を行うBIMの適用は、新築マンションの着工ベースで2019年度には100%になるという。マンションに設置したセンサー情報を収集するなどして暮らしに関わる情報を集積した「LIM」とBIMの連携も計画している
長谷工コーポレーションは2018年8月1日、東京都内で会見を開き、同社におけるICT活用とオープンイノベーション推進の方針について説明した。2012年から推進してきた、3Dデータを基に設計施工を行うBIM(Building Information Modeling)の適用は、新築マンションの着工ベースで2018年度は60%に達しており、2019年度には100%になるという。加えて、マンションに設置したセンサー情報を収集するなどして暮らしに関わる情報を集積したLIM(Living Information Modeling)とBIMの連携により、新たなICTマンションの商品企画などを可能にするプラットフォーム「HASEKO BIM&LIM Cloud」を構築する方針である。
同社 専務執行役員の池上一夫氏は「ICTをはじめテクノロジーの進歩が著しい中、各社が積極的に取り組んでいるビッグデータ活用を当社も進めて行く。マンション建築の設計施工を目的に構築してきたBIM基盤の完成度はかなり高まっている。これと連携するLIMの構築はこれからの取り組みになるが、1社だけでできることではないので、オープンイノベーションによって推進していきたい」と語る。
同社は長谷工版BIMとして、オートデスクのBIMソフトウェア「Revit」をベースに、マンションの設計施工に特化した機能を組み込んでいる。BIMの3Dデータを用いて、チェック作業の見える化や自動化が可能な機能も盛り込んでいる。施工における配筋検討などの架設計画への適用、マンション販売における顧客のVR(仮想現実)体験などにもBIMの3Dデータの活用を展開しているという。
池上氏は、BIM導入の効果について、設計プロセスにおける30%の省力化と、施工プロセスにおける20%の労務削減が可能になるとした。「設計プロセスでは、BIMで得られた省力化のリソースを施工プロセスのフロントローディングに充てる。施工プロセスでは、川上となる積算でかなりの労務削減が期待できるが、実施工でどこまで効果が得られるかはこれから確認していきたい」(同氏)という。
LIMについては、マンションやマンションに住まう人のあらゆる情報をデータ化し、さまざまなサービスに適応可能な形式に見える化(モデル化)するというコンセプトだ。BIMによって設計したマンションの情報をLIMに集積し、LIMの情報をBIMにフィードバックしてよりよいマンション建築につなげるというサイクルを想定している。
LIMのデータ収集で用いるセンサーとしては、温湿度や気圧、雨量などの環境センサー、地震センサーなどを想定しており、既に長谷工グループの保有物件5カ所を用いたリモートモニタリングの実証実験を行っている。
BIMとLIMの連携により、長谷工グループで展開するマンション管理、高齢者向け施設の運営を中心とするシニア事業、不動産流通の各事業で新たなサービスを展開していく。例えば、30年以上の歴史があるシニア事業では、介護ロボットやコミュニケーションロボットの活用を進めて行く。ソフトバンクロボティクスの「Pepper」を用いた、介護予防体操アプリ「ゆうゆう体操」のアプリなどの実績があり、23台のロボットが運用されているという。また、不動産流通については最も取り組みが遅れているとして、資産価値の維持や向上に役立つ技術、不動産テックの導入を急ピッチで進めるとした。
これらの他、ドローンの活用事例として、工事進捗撮影や躯体工事検査、先述したVR体験に展開するための眺望撮影なども紹介した。
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