IHIアグリテックは、「第34回国際農業機械展in帯広(第34回国際農機展)」において、農業機械の設計開発に用いた3D CADデータを活用したAR展示を披露した。会場に搬入できなかった大型の農業機械をARを使って来場客に紹介するとともに、部品の内部構造をARで示すことによりアフターサービスなどに活用できるコンセプト提案も行った。
IHIアグリテックは、北海道帯広市で開催された農業機械の展示会「第34回国際農業機械展in帯広(第34回国際農機展)」(2018年7月12〜16日)において、農業機械の設計開発に用いた3D CADデータを活用したAR(拡張現実)展示を披露した。会場に搬入できなかった大型の農業機械をARを使って来場客に紹介するとともに、部品の内部構造をARで示すことによりアフターサービスなどに活用できるコンセプト提案も行った。
同社は、2017年10月にIHIシバウラとIHIスターが統合して発足した農業機械メーカーだ。今回の第34回国際農機展では、限られた展示スペースの中で、統合前の両社がそれぞれ展開するさまざまな製品を展示する必要があった。また、寸法が10mを超えるような大型の農業機械を多数並べることも難しかった。
そこで、展示が難しい大型の農業機械をARで紹介することにした。ARで展示したのは、牧草など飼料材料を混合してラッピングまでを行う細断型ベーララッパ、牧草の乾燥を促進するために反転させるジャイロテッダ、たい肥の散布に用いる大型ハイドロマニュアスプレッダだ。
アジアを中心としたグローバル展開の主力製品に位置付けられている細断型ベーララッパは、全長8×全幅2.3×高さ4mものサイズになる。ARを使えば、この細断型ベーララッパを実寸大や縮小して見せたり、機能をアニメーションで見せたりすることが容易に行える。幅12mのジャイロテッダは実機を展示しているものの、その最大の特徴である幅4m以下に折りたためることを実機のデモで示すのは難しい。ARであれば、その様子をアニメーションで紹介することができる。大型ハイドロマニュアスプレッダは、散布するたい肥などに合わせてさまざまなオプションを用意しているが、実機で全てのオプションを紹介することはできない。ARであれば、簡単にオプションを交換してその状態を見せることが可能だ。
農機のユーザーや農機販売店から注目を集めたのが、ARをアフターサービスに活用できるコンセプト提案だ。施肥に用いるブロードキャスターの部品を展示し、その部品を形状認識することで、部品の内部構造をARで見せられるようにした。ARでは、内部パーツの部品番号や名称、在庫状況、図面などを確認できる。さらに、IoT(モノのインターネット)と連携したセンサーデータの表示により、故障箇所などを確認することも可能だ。
これらのARデータは、設計開発のためPTCの「Creo」で作成した3D CADデータを活用した。大型農機のAR展示については、「Creo Illustrate」で3Dアニメーション化し、ARプラットフォーム「Vuforia Studio」でAR化している。アフターサービス活用では、3D CADデータを基にVuforia Studioで形状認識を行っており、IoTとの連携ではIoTプラットフォームの「ThingWorx」を用いている。
「これまで3D CADデータは設計開発プロセスの中でしか用いられていなかった。かなりの工数をかけているにもかかわらず他に活用されていないのが実情。しかし、ARを用いたアフターサービス活用を実用化できれば、3D CADデータの作成は売り上げを得るためのコンテンツを作ったことにもなる。技術者として、これまでじくじたる思いがあったが、ARやIoTによって3D CADデータのさまざまな活用が可能なりつつあることを実感している」(IHIアグリテックの説明員)という。
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