デル 最高技術責任者 黒田晴彦氏がVRのこれまでの歴史や現状の技術、今後予想できる動きについて、同社主催イベントで語った。VRとARとMRの定義の違い、活用方法の違いについても説明した。
デルの日本法人は2017年4月24日、名古屋市内で自動車製造関連業向けVR(Virtual Reality)セミナー「どうやってVRを実現する?」を開催した。同イベントはエヌビディアとの共催。基調講演ではデル 最高技術責任者 黒田晴彦氏が「VR 新時代にむけた Dell Technologies の取り組み - クリエイターのためのプラットフォームとVRの民主化」と題して、VRのこれまでの歴史や現状の技術、今後予想できる動きについて語った。本稿ではその内容を紹介する。
PCやサーバの大手であるデルだが、現在はVRに対応したワークステーションシリーズ「Dell Precision」を開発・販売しており、マイクロソフトのスマートグラス「Microsoft HoloLens」の技術パートナーでもある。現時点は米国拠点のみではある、大学の研究機関や企業と組んでVRについて共同研究するパートナープログラムにも取り組む。
デルは2016年9月にはストレージ機器大手のEMCの買収を完了。EMCはDell Technologies傘下の独立子会社となり、「Dell EMC」という名称となった。同社のサーバ「PowerEdge」を組み合わせたVRシステムも提供する。PowerEdgeはVR用に大量に生成されたデータの保管・配信などの総合サービス構築に最適だとしている。
デルはハイエンド機種だけではなく、立ち上がったばかりのVR市場をより広げるべく安価なエントリー機種の開発・投入にも意欲を見せる。
同社は、2017年1月に開催されたコンシューマーエレクトロニクスショー「CES 2017」でもVR製品を展示した。「CES 2017では、『Gaming and Virtual Reality』が非常に注目された。その後、4月に開催されたドイツの『CeBIT 2017』でもVRが主役となっていた」(黒田氏)。
黒田氏はまず、VRの過去について振り返った。
VRという言葉が登場したのが1989年のこと。当時、米国航空宇宙局(NASA)のエイムズ研究センターとVRシステムを共同開発をしていた、VPL Researchの創業者であるJaron Lanier氏が最初に使ったとされている。以降、VRシステムを発表する企業が次々と現れ、その言葉はだんだん一般的になっていく。そうとはいえ、まだ一部の研究機関で使われるような高級なシステムだった時代である。
1995年は「第一次 VRブーム」と呼ばれ、一般消費者向け製品が登場する。日本市場においても、任天堂のモノクロ3Dゲーム機「Virtual Boy」、ソニーのHMD「Glasstron」といったVR製品や、三井物産の仮想空間ショッピングモール「CURIO CITY」というVRのコンセプトに基づいたシステムが登場した。ただ、製品やシステムも限定的なものが多く、このブームは徐々に下火となっていった。
その後、再びVRが脚光を浴びだしたのが、それから10年近くたった2014年のこと。「第二次 VRブーム」に火が付きはじめた。2012年に初のプロトタイプが登場し、少しずつ改良が重ねられていた広視野角のHMD「Oculus Rift」への注目度が高まってきたころである。2014年3月、正式な製品すら出していなかったOculus Riftの開発元をSNSの大手 Facebookが20億ドルという巨額を投じて買収したことも衝撃的であると話題となった。その年の「Google I/O 2014」では、紙製の簡易HMDである「Google Cardboard」の試作機が、来場者にノベルティーとして配布された。さらに日本でもこの年、スマートフォンにセットして使え、「1000円くらいで買えるVR」として「ハコスコ」が登場した。「日本もアメリカも、VRに対して“ザワザワっとした”ようなタイミングだった」(黒田氏)。
そして2016年は「VR元年」と呼ばれたほど、VRの話題が大いに盛り上がりを見せ、ゲームや技術系の展示会などでも関連展示が非常に目立った。この年の3月にはOculus Riftがいよいよ一般向けに販売開始され、続いて同年4月には「HTC Vive」が、10月には「PlayStation VR」が登場した。さらに同年にはGoogleが、「Works with Google Cardboard certification」(WWGC)という認証精度を開始している。
「2016年は、世の中の皆が、『これは面白い』と具体的な製品を見て、体験した年」(黒田氏)。
黒田氏はVRに関連する用語について、以下のように区別して説明する。
「VRはかつてゲームから始まったが、現在は小売りや娯楽産業の他、さらにエンジニアリングやデータ分析、教育、医療といったB to B(ビジネス)にまで適用範囲が広がっている」(黒田氏)
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