スバルが2025年までの新中計、100億円規模でベンチャーへ投資も製造マネジメントニュース

SUBARU(スバル)は、2025年度を最終年度とする新しい中期経営計画を発表した。新中計では、信頼回復に向けた組織風土の改革と品質向上に注力する。

» 2018年07月11日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
スバルの中村知美氏

 SUBARU(スバル)は2018年7月10日、東京都内で会見を開き、2025年度を最終年度とする新しい中期経営計画を発表した。

 新中計では、信頼回復に向けた組織風土の改革と品質向上に注力する。具体的には、商品企画から生産に至るまで品質を作り込む全てのプロセスを見直し、生産拠点のレベルアップや品質マネジメント体制の強化、販売台数の急拡大に対応したサービス基盤の整備、品質改善に向けた設備投資を実施する。「全品質」の向上に向けて、5年間で1500億円を投じる。

 スバルは2018年4月に国土交通省に対し、完成検査工程の抜き取り検査で燃費と排ガスの測定値を書き換える不正行為が行われていたことを報告。その後、同年6月にも測定条件を満たさない状態で抜き打ち検査が行われていたことが明らかになった。スバル 社長の中村知美氏は「品質の抜本的な改善が急務だと感じている。何よりも品質が優先するという会社に変えていく。スバルの価値として品質を位置付けていかなければならない」とコメントした。

新車の8割をコネクテッドカーに

 安心安全への取り組みでは、2030年までにスバル車の運転中もしくはスバル車との衝突による死亡事故をゼロにする目標を掲げた。運転支援技術は、人間が得意とするタスクを尊重しながら、苦手なタスクを自動化で補うことで安全性を高める開発方針だ。衝突安全性能のさらなる向上にも取り組む。また、知能化技術とつながる技術を組み合わせてさらに安心安全のレベルアップを図るとしている。

 コネクテッドサービスも強化する。現在米国で展開しているサービス「STARLINK」をグローバル展開し、2022年までに日米とカナダの8割以上の新車に同サービスを普及させる。また、コネクテッド技術やセキュリティなどの領域では、トヨタ自動車との連携を強化する。

 同日付で、SBIグループのSBIインベストとともにプライベートファンドを立ち上げたと発表した。スバルの既存事業や新規分野でシナジー創出が見込める国内外のベンチャー企業に投資する。5年間で100億円規模の投資を計画している。

 商品計画では、主力車種の全面改良を毎年実施する。SUVとスポーツモデルの充実を図る。また、プラットフォーム「スバルグローバルプラットフォーム」も進化させる。環境性能の向上のため、電気自動車やプラグインハイブリッド車、ハイブリッド車を拡充するとともに、エンジン車の燃費改善に取り組む。

2025年度にグローバルで130万台

 販売面では、2025年度にグローバルで2018年度計画比18%増の130万台を目指す。このうち、北米では同20%増の92万台、北米を除いた海外地域では同27%増の23万台を計画している。北米ではサンベルト(北緯37度線以南の地域)を中心としたシェアの低いエリアで販売網を強化する。同地域は保有台数が少ないため、中古車を優先的に流通させ、無料の点検パッケージを展開するなどして保有を増やしていく。

 北米以外の海外ではアジアとロシアを重視する。アジアでは、タイのCKD(コンプリートノックダウン)工場で2019年から「フォレスター」の生産を開始するのを利用して大きな成長を目指す。日本では、現状レベルである登録車の月間販売1万台を維持する方針だ。

 グローバルでの生産能力は、2020年度にフル操業で129万台を見込む。このうち、国内が77.9万台、米国のSIA(Subaru of Indiana Automotive)が49.7万台、アジアのCKDで1.4万台となる。米国では輸入車の関税を強化する検討が進んでいるが、「サプライヤーや雇用、操業のことを考えると簡単な答えは出ない。米国では『アセント』を立ち上げており、2019年には主力車種のフルモデルチェンジを予定しているので、これで現状のキャパシティーは埋まるだろう。政策の動向を注視していく」(中村氏)という。

 業績面では、設備投資や研究開発費を積み増しながら、営業利益率10%を目指す。まず、2018〜2020年度の3カ年では、研究開発費を2015〜2017年度比で18%増の4000億円に、設備投資は同3%増の4500億円に増やす。営業利益率は9.5%を目標とする。

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