MONOist デジタル変革やIoTプラットフォームなどデジタルソリューションには、数多くの企業が取り組んでいますが、あらためて日立製作所の強みについて、どう考えていますか。
阿部氏 幾つかの考え方があるが、1つは日立製作所がグループとしてさまざまな企業体や事業を抱えるという点がある。ソリューションの展開をするのに、顧客側にはリスクをできるだけ小さくし、より簡単に課題を解決したいというニーズがある。
ただ、従来のように1つの製品やパッケージソフト、サービスなどで課題が解決できる時代ではない。今までになかった、これらの組み合わせを試しながら、トライ&エラーを繰り返して、解決の形を探る必要がある。さまざまな業種や事業体を抱える日立製作所であれば、これらの各業種の商習慣に合わせた提案などができる他、社内での実践や、過去の構造改革の成果などが生かせるために、より短期で成果が出るという点が期待されていると感じている。
ある意味で2000年代に「コングロマリットディスカウント(複合企業体で弱い事業体が存在し企業グループの総合的な価値をきそんしている状態)」といわれてきたのが、逆転したような感じだ。逆にコングロマリットであるメリットを生かしていかなければ、日立製作所のような企業に勝ち目はない。
ただ、第4次産業革命といわれる中で、日本政府が目指す「Society 5.0」や「Connected Industries」を見ても、新たな価値は従来の業界や産業の中だけには存在せず、これらの境界線や間などに存在する。その意味では複合企業体である強みが発揮しやすい環境だともいえる。
一方で、技術面で考えた場合に強みといえるのは、「システムの信頼性」だと考えている。この「システム」はITやOTなど個々の小さいものではなく、鉄道システムや電力システムなど総合的なシステムを指す。日立製作所では、以前からこれらのミッションクリティカルな領域でのシステム構築を担ってきた。これにはITやOT、エッジデバイスなどのさまざまな技術を複合的に組み合わせて、高めていかなければならない。例えば、それを象徴する技術の1つが自律分散システムである。
先述した「Society 5.0」などを実現するためには、こうした総合的なシステム構築が新たにさまざまな領域で必要になってくる。そうしたノウハウや技術力を備えているのは他社にない強みだと考えている。
もう1つが、「データ量の影響を受けない信頼性」だ。デジタルソリューションを展開する上で、カギを握る重要な要素がデータだ。IoTなどで「モノが話す」時代となっており、通信環境で流通するデータ量は膨大になる。日立製作所では電話時代からの通信関連技術や、データベース構築などによるデータの取り扱いに関する技術などを蓄積しており、これらが生かせると感じている。
MONOist これらの強みを生かして2018年度はどのような取り組みを進めるつもりですか。
阿部氏 大きく分けて既存事業の拡大と収益性向上への取り組みを進めていく。拡大に向けては、ターゲット顧客の拡大や地域の拡大、成果が生まれつつあるスマートマニュファクチャリングに向けた取り組みの横展開、ERPソリューションを起点とした事業領域拡大などに取り組む。
特に具体的な取り組みの中で拡大に取り組むのがスマートマニュファクチャリング領域でのIoTプラットフォーム「Lumada」を中核としたサービスの横展開だ。既にスマートマニュファクチャリング領域では、オークマやダイセル、ダイキン工業と協業し、それぞれの課題解決につながるソリューションの開発や展開を推進している※)。
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これらをさらに洗練させていく一方で、得た知見を生かした新たなサービスビジネスなどを協力して展開する取り組みに広げていく。例えば、もともとオークマとの協業ではオークマの新工場の見える化やスマート化に向けた取り組みだったが、さらにそれを広げ、オークマの工作機械の顧客企業に対してスマート化や見える化を進める取り組みを協力して進めていく。こうした横展開の動きを広げていきたい。
オークマでの取り組みの他、アマダとのデジタルソリューション連携などにも取り組んでいる※)。アマダの主力生産拠点である富士宮工場に「Lumada」を活用した先進モデルを順次構築する。さらにアマダは独自のIoTソリューション「V-factory」を展開しているが、この「V-factory」と「Lumada」を連携させる取り組みを現在進めているところだ。
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