24時間365日の安心安全を提供、新型「クラウン」「カローラスポーツ」から展開モビリティサービス

トヨタ自動車は2018年6月26日、フルモデルチェンジした「クラウン」と、新型車「カローラスポーツ」を発表した。2モデルとも同日付で発売する。新型クラウン、新型カローラスポーツともに車載通信機(DCM)を全車標準搭載とし、コネクテッドカーの本格展開を始める。ユーザーは3年間無料でコネクテッドカーのサービスを利用できる。クルマがつながることによってユーザーとの接点を増やし、さまざまなサービスで利便性や安心安全を提供する。

» 2018年06月27日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 トヨタ自動車は2018年6月26日、東京都内で会見を開き、フルモデルチェンジした「クラウン」と、新型車「カローラスポーツ」を発表した。2モデルとも同日付で発売する。新型クラウン、新型カローラスポーツともに車載通信機(DCM)を全車標準搭載とし、コネクテッドカーの本格展開を始める。ユーザーは3年間無料でコネクテッドカーのサービスを利用できる。クルマがつながることによってユーザーとの接点を増やし、さまざまなサービスで利便性や安心安全を提供する。

 月間販売目標台数はクラウンが4500台、カローラスポーツが2300台。今後、全面改良などのタイミングでほぼ全ての車両にDCMを搭載し、コネクテッドカーを普及させていく。2018年内に全国の販売店やオペレーションセンターでコネクテッドサービスに対応する体制を整える。

カローラスポーツ(左)とクラウン(右)の新型車を同時に発表した(クリックして拡大)

ヒトとつながるサービス

トヨタ自動車の友山茂樹氏(クリックして拡大)

 トヨタ自動車 副社長の友山茂樹氏は、クラウンとカローラスポーツから提供を始めるコネクテッドサービスについて「ポイントは人間くささだ。見守ってくれる人と24時間365日つながる。クルマを買えば専任のコンシェルジュがついてくるとイメージしてほしい。コネクテッドサービスは、AI(人工知能)やITが表立って出てくるのではなく、ヒトとつながるヒューマンコネクテッドサービスであるべきだと考えている」と会見で説明した。

 クラウンとカローラスポーツは、DCMが車載ネットワークのCANを通じて収集した車両情報を基にさまざまなサービスを利用できる。販売店やオペレーションセンターから警告灯の点灯など車両の異常を把握してドライバーにアドバイスを提供したり、最適な整備、メンテナンスのタイミングを知らせたりする。また、走行距離や安全運転の度合いに応じて保険料を割り引く新しい自動車保険のプランを選択することも可能だ。

 警告灯が点灯した際にオペレーションセンターに連絡すると、オペレーター側で故障など不具合の要因を確認して引き続き走行できるかどうかを判断する。販売店での修理が必要な場合の入庫の手配などもオペレーターが行う。オペレーターは警告灯が点灯した要因について販売店に引継ぎし、営業時間内であれば販売店から30分以内にユーザーに連絡できるようにする。

 こうしたサービスはプラグインハイブリッド車「プリウスPHV」から提供しているが、営業時間内は販売店が、夜間はオペレーションセンターが対応していた。今回からは、24時間全てオペレーションセンターで問い合わせを受け付け、走行可能な状態か、走行可能ではあるがすぐに入庫が必要な状態かなどをオペレーターが見極め、販売店の工数を減らす。

スマートフォンでクルマのことが分かる

 ユーザーのスマートフォンとクルマが連動した機能も提供する。SNSのLINEを通じて目的地の設定やガソリン残量の確認が行える。また、専用のアプリ「MyTOYOTA for T-Connect」によって、警告灯が点灯した要因の詳細や電子キーの電池残量、エンジンオイルやブレーキオイルの量など整備に関する情報の他、ドアロックや灯火類の状態を確認できるようにする。ハザードランプの消灯や施錠を忘れた場合に、スマートフォンから操作することも可能だ。

 MyTOYOTA for T-ConnectはIDとパスワードを設け、本人以外が車両の操作に使用できないようにする。また、スマートフォンから車両を操作する場合、トヨタ自動車のサービス基盤「モビリティサービスプラットフォーム」を経由して専用アプリからの正規の操作であることを確認して、車両にアクセスする。そのため操作完了まで十数秒程度のタイムラグがある。DCMにもセキュリティ機能を持たせており、モビリティサービスプラットフォームと二重でセキュリティを担保する。

MyTOYOTA for T-Connectの画面。IDとパスワードが要求される(左)。スマートフォンから車両を施錠できる(中央)。警告灯が点灯した理由なども画面で見ることができる(右)(クリックして拡大)

 保険会社やLINE、ユーザーのスマートフォンが車両情報を利用できるのは、モビリティサービスプラットフォームを経由しているためだ。「モビリティサービスを充実させていく中で、異業種の企業との連携が増えていく。お客さまとの接点をセキュアに維持しながら、車両情報と企業が連携できるようにしていくための基盤だ」(友山氏)。

 他の自動車メーカーも自社のユーザーに対してコネクテッドサービスを提供している。これに対し、友山氏は「トヨタのサービスの特徴は安心安全に重点を置いたことだ。車両情報を活用した予防メンテナンスや、販売店から最適なタイミングで接触するためのサービスは他社ではやっていないと認識している。ヒューマンコネクテッドサービスでお客さまの気持ちに寄り添えることや、24時間365日対応して販売店も連携できるオペレーションはトヨタのサービスならではの強みになると考えている」と語った。

 また、友山氏はクルマを保有するユーザーとの接点を、長い保有期間にわたって維持し続ける上でコネクテッドカーが重要であると説明。「運転支援システムの搭載などで、原価が上がる傾向にあるが、価格を決めるのはお客さまだ。払ってもらえないのであれば原価低減で価格を下げる必要がある。利益率が狭まってきた時に、クルマを保有するユーザーに対していかにビジネスを展開できるか。お客さまとの接点を増やしたい、持ち続けたいというのは、長年取り組んできたことでもある」(友山氏)。

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