トヨタ自動車は、カーシェアなどのモビリティサービスの普及を踏まえ「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」の構築を推進すると発表した。併せて、カーシェアで安全かつ安心なドアロックの開閉やエンジン始動を実現するためのデバイス「スマートキーボックス(SKB)」も開発した。
トヨタ自動車は2016年10月31日、カーシェアなどのモビリティサービスの普及を踏まえ、既存の「トヨタスマートセンター」「トヨタビッグデータセンター」「金融・決済センター」の上位に、モビリティサービスに必要とされるさまざまな機能を備えた「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」の構築を推進すると発表した。
MSPFは、トヨタ自動車がこれまでライドシェアなどのモビリティサービス事業者と提携する際、開発、提供していた車両管理システムやリースプログラムといった個別の機能を包括したプラットフォームである。今後、提携する事業者は、このプラットフォーム内の機能をサービス内容に応じて利用することで、より便利で細やかなサービスを顧客に提供していくことが可能になる。トヨタ自動車は今後、このMSPFをカーシェアやライドシェアといったモビリティサービスの他、テレマティクス保険など、さまざまななサービス事業者との連携に活用していく。
MSPFの発表に併せて、MSPFの1つの機能として、カーシェアにおいて安全かつ安心なドアロックの開閉やエンジン始動を実現するためのデバイスとなる「スマートキーボックス(SKB)」を開発した。このSKBの実証プログラムを、米国で個人間カーシェアビジネスを手掛けるベンチャー企業・Getaround(ゲットアラウンド)と共同で、2017年1月からカリフォルニア州サンフランシスコを皮切りに始める。実証プログラムで活用するMSPF内の機能の開発/運営は、米国におけるトヨタのコネクティッド領域の研究開発会社であるToyota Connected, Inc.(TC)が行う予定。また今回の協業により、トヨタ自動車などが設立した未来創生ファンドから、Getaroundへの戦略的出資を2016年10月に実施している。
従来、カーシェアの利用に不可欠な鍵の受け渡しは、利用者と車両の所有者がコンソールボックス内に鍵を置くなどして受け渡しを行うか、車両制御系のネットワークであるCAN(Controller Area Network)に特殊な通信装置を直接接続することで鍵の開閉などを行っていた。この手法はセキュリティ面での課題が指摘されている。
トヨタ自動車が開発したSKBを使えば、車両を改造することなく、所有者が端末を車内に設置するだけで、利用者は自身のスマートフォンで鍵の開閉、エンジン始動ができるようになり、安心かつ安全に車両の貸し借りを行えるようになる。
具体的な利用法としては、車両の所有者がまず、SKBを車内の任意の場所に設置する。車両の利用者は、スマートフォン上のアプリを操作してトヨタスマートセンターからSKBにアクセスするための暗号キーを受信し、利用者がそのスマートフォンを車両に近づけると、SKBとの間で暗号キーが認証され、通常のスマートキーと同様に鍵の開閉などの操作を行えるようになる。操作可能な時刻や期間は、利用者の予約内容に応じてトヨタスマートセンターで設定/管理される。
今回のGetaroundとの実証プログラムの中では、SKBのカーシェアにおける効果、利便性の検証を行う他、トヨタファイナンシャルサービス(TFS)とも連携し、車両所有者による車両リース代金の支払いにカーシェア収入を充てる、新たな金融商品の開発も行う。これにより、カーシェア対応車両が一層増加し、利用者の利便性向上と新たな顧客層の創出を目指していく。
今後トヨタは、MSPFの幅広い活用を推進していく予定。日本国内では、今回のSKBの実証結果を踏まえ、レンタカーの無人貸し出しサービスなどへの活用などを検討していく。
トヨタの専務役員でコネクティッドカンパニー プレジデントの友山茂樹氏は「トヨタは、モビリティサービス・プラットフォーマーとして、あらゆる企業、サービスとオープンに連携し、より便利で安心な移動をお客さまに提供すべく、新たなモビリティ社会の創造へ貢献していきたい」と述べている。
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