誰でも気軽にモノづくりを楽しむ古民家――ものづくりカフェ こねくり家(佐賀県)地方発!次世代イノベーション×MONOist転職

「次世代の地域創生」をテーマに、自治体の取り組みや産学連携事例などを紹介する連載の第26回。佐賀県佐賀市の古民家で運営されているカフェ+ファブ施設「ものづくりカフェ こねくり家」を紹介する。

» 2018年06月08日 09時00分 公開
[MONOist]

イノベーションの概要

 「ものづくりカフェ こねくり家」は、佐賀の自慢の器でランチやスイーツ、お酒も楽しめるカフェと、ファブ施設が同じスペースに共存しているというユニークな場所。古い家並みが残り、景観形成地区でもある佐賀市柳町の古民家「旧久富家」をリノベーションし、2015年2月にオープンした。

出典:ものづくりカフェ こねくり家

 運営しているのは、Webインテグレーションを軸に行政や企業、地域社会の課題解決を行っているEWMファクトリー。「こねくり家」という名前は、CONNECT(つなぐ)とCREATE(作る)を掛け合わせて作られ、「プロアマ問わず多くの人に、モノづくりをもっと気軽に楽しんでいただきたい。そしてひとり一人のモノづくりの輪が、もっと広がっていってほしい」という思いが込められているそうだ。

 用意されている機材は、プロのクリエイターが使用するソフトがインストールされているPCやタブレット、3Dプリンタ、LEGOマインドストーム、そして自らアプリ体験の教材ともなってくれるPepper。スタッフがしっかりサポートしてくれるので、手ぶらでカフェに来た人が、気軽にモノづくりを体験することができる。

 読書会や似顔絵講座などさまざまなイベントにも活用され、モノづくりに関連する勉強会や体験イベントも開催している。子供向けの教室として親子でPepperのアプリに挑戦したり、夏休みの自由研究にもなるWebページ作成や3Dモデリングの体験、またスマートフォン教室などシニア向けの教室も実施している。

イノベーションの地域性〜佐賀県といえば……

 佐賀県は、東は福岡県、西は長崎県、北は玄界灘、南は有明海に面している。東京まで900Km、大阪まで500Kmに対して、韓国の釜山には200Kmという位置にある。そのためアジアとの交流が深く、弥生時代の遺跡を公園化した吉野ヶ里歴史公園や、佐賀城の本丸を復元させた佐賀城本丸歴史館など、歴史を感じられる施設もある。日本初の実用蒸気船「凌風丸」の建造が行なわれた佐賀藩の海軍所跡地「三重津海軍所跡」は、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産である。

吉野ヶ里歴史公園

 近年では韓国、台湾、香港、中国、タイなど、特にアジアからの訪日客が急増。佐賀県観光アプリ「DOGANSHI★TA★TO?(どがんしたと?)」は、英語・中国語・韓国語・タイ語に対応し、24時間対応しているトラベルコールセンターは14ヶ国語に対応している。

 日本で最初の陶器「有田焼」や「伊万里焼」を始め、やきものが盛ん。グルメでは「佐賀牛」や新鮮で透明な「イカのいけづくり」が有名だ。「町の数ほど温泉あり」といわれるほど温泉も豊富に湧き、温暖な気候ながらスキーができる山もある。熱気球の世界大会「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」も開催される。

 産業構造は、第1次産業の比率が全国に比べて高く、板のりとハウスみかんの収穫量は全国第1位。就業者総数では、製造業が15.2%と最も多くなっている。

ここに注目! 編集部の視点

 こねくり家では、地域がかかえる課題をモノづくりの力で元気にさせたいと、新たな取り組みにチャレンジしている。

 その1つは「こねくり家ドローン部」。地元のすばらしいものを広めたいという思いがきっかけでスタートした取り組みで、人口密集地や夜間の飛行など、一般に規制されているフライトも許可されたスタッフが在籍している。2018年のGWには、県内の図書館でドローンの操縦と自動飛行を行うプログラミング体験ができるイベントを開催し、30組の親子が参加した。

 また、佐賀のクリエイターと大都市圏の仕事をつなぐマッチングサービス「ふるさとソーシングSAGASO(サガソ)」は、EWMグループと佐賀市、佐賀商工会議所が協力して推進する事業だ。こねくり家がコーディネーターとなって双方のヒアリングや仕様の調整を行い、ポスターやロゴ等のデザイン、Webサイトの作成などで実績を増やしている。

 古民家にカフェ+ファブ施設という、暖かくて緩い設定の中で、子どももおとなも気負うことなくモノづくりに触れられるこねくり家。モノづくりの裾野が広がっている。

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