制御系と情報系の2つに分かれていた車載ソフトウェアだが、自動運転技術の実用化に向けて、制御系の特徴であるリアルタイム性や信頼性を持ちつつ、情報系に近い情報処理能力も満たせるような、第3の車載ソフトウェアが求められるようになっている。この要求に応えようとしているのが「AUTOSAR Adaptive Platform」だ。
これまで自動車を構成する車載システムに用いられるソフトウェアは、おおまかに制御系と情報系の2つに分かれていた。走る、曲がる、止まるといった、リアルタイム性や動作の信頼性が求められる制御系は、いわゆるリアルタイムOSをベースとした組み込みソフトウェアとなっている。現在は、欧州の車載ソフトウェア標準であるAUTOSARの導入が進んでおり、先行していた欧州の自動車メーカーに続いて、国内自動車メーカーも順次採用範囲を拡大しているところだ。
カーナビゲーションシステムを中心とする情報系では、自動車の快適性を増すHMI(Human Machine Interface)が求められている。そのため、よりリッチなグラフィックス表現が可能なソフトウェアが用いられている。近年では、Androidや車載LinuxのAutomotive Grade Linux(AGL)などがシェアを伸ばしつつある。
ここまでは、制御系と情報系の2つに分かれていた車載ソフトウェアだが、自動運転技術の実用化に向けて、制御系の特徴であるリアルタイム性や信頼性を持ちつつ、情報系に近い情報処理能力も満たせるような、3つ目の車載ソフトウェアが求められるようになっている。この要求に応えようとしているのが先述したAUTOSARだ。これまでのAUTOSARをCP(Classic Platform)と位置付け直す一方で、新たな要求を満たすAP(Adaptive Platform)の仕様策定に乗り出したのだ。
このAUTOSAR APは、2018年10月に量産適用向けの仕様がリリースされる予定になっている※)。「人とくるまのテクノロジー展2018」(2018年5月23〜25日、パシフィコ横浜)では、AUTOSAR関連の車載ソフトウェアベンダーがAUTOSAR APに関する展示を行っていた。
※)関連記事:AUTOSARの最新動向:2018年3月版
SCSKは、車載ソフトウェア関連事業を手掛ける国内企業と共同開発したAUTOSAR CPのBSW(基盤ソフトウェア)「QINeS-BSW」を販売している。今回の人とくるまのテクノロジー展2018では、独自にQINeSのブースを設けて、QINeS-BSWや開発ツールなどについてアピールした。
QINeSの展示で前面に押し出されていたのが、セントラルゲートウェイを介したAUTOSAR APとAUTOSAR CPの連携デモンストレーションである。Unityベースの3Dデータ空間をシミュレーション環境として、制御系システムはQINeSベースのAUTOSAR CPを、セントラルゲートウェイや車載カメラ、ライダー(LiDAR)、ADAS、HMIなどにAUTOSAR APを適用。なお、AUTOSAR APの車載ソフトウェアはAUTOSARが提供するレファンレスを用いている。
これらを連携動作させるとともに、クラウドや専用サーバで運用されるセキュリティ監視センターでCAN通信の不正なパケットを即座に検出できることも示した。
QINeSの説明員によれば「AUTOSAR CPについてはリリース4.2.2までは対応している。AUTOSAR APについては、仕様を策定しているワーキンググループに参画しており、最新情報を収集できるようにしている」という。
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