三菱電機は2018年5月17日、100%子会社である多田電機と協力し、火花をほとんど出さないファイバーレーザー溶接技術の開発に成功したと発表した。溶接技術の新技術として火花をほとんど出さず、溶接品質を向上し、さらに生産性も高めることができるという。
三菱電機は2018年5月17日、100%子会社である多田電機と協力し、火花をほとんど出さないファイバーレーザー溶接技術の開発に成功したと発表した。溶接技術の新技術として火花をほとんど出さず、溶接品質を向上し、さらに生産性も高めることができるという。
溶接は金属加工の基本的な工程の1つだが、溶接加工機の中でも現在比率を高めているのがレーザー溶接加工機である。ただレーザー溶接では、火花(溶融金属の飛散)が溶接品質や生産性に影響を与えることが課題となっていた。レーザー溶接によって火花が出る仕組みは、レーザー光により金属の瞬時溶融や蒸発によって発生する穿孔に対し、金属蒸気などで溶融金属が押し上げられ、大きな上昇速度となった時に溶融金属が飛び散るというものだ。
これに対し新たに開発した技術は、強いレーザー光の周りに弱いレーザー光を照射し、弱いレーザー光によりキーホールの開口部が押し広げられることで、溶融金属の飛散を抑制するというものである。
火花が発生することで、接合部表面の肉厚が減少し接合強度が低下したり、火花が材料表面に付着し製品不良が発生したりしていた。また、これらを抑制するために溶接速度を遅く設定せざるを得ず、生産性を高めることができないという状況が生まれていた。しかし、新技術により、火花の発生を抑えることでこれらの課題を解決。結果として、溶融金属の飛散量を95%削減し、溶接の標準速度を2倍にすることに成功した。
火花抑制を実現したのは、レーザー溶接機の加工ヘッドのビーム集光工学系の開発である。これを独自設計により、汎用レンズを組み合わせ、弱いレーザーと強いレーザーを同時に出せるようにした。ファイバーレーザー発振器などは機種を選ばず使用でき、既存設備でも利用できる。また、特注レンズではなく汎用レンズの組み合わせで実現できるためにコストも抑制できるとしている。
同技術の開発を担当した三菱電機 先端技術総合研究所 駆動制御システム技術部 次長の藤川周一氏は「新たな技術は多くの場合はデメリットを生むものだが、今回の新技術は溶接部分に関しては従来の火花の課題を解決するメリットしかないと考えている。唯一の課題は光学設計が複雑になることだ」と自信を見せる。
実証はレーザー出力10kWで行ったが「大きな出力で実証すれば、より小さい出力でも対応可能となる。さまざまな出力のレーザーでも同様の成果が出せる」と藤川氏は述べている。同技術を活用して今後、多田電機および三菱電機それぞれで製品化を進め、2019年度の製品化を目指す。藤川氏は「当初は多田電機が分野として強みを持つ鉄鋼向けになると思うが、三菱電機で展開する部品や自動車関係などに向けても徐々に展開を広げていく流れとなるだろう」と述べている。
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