ソフトバンクがNIMSとリチウム空気電池の実用化研究を進める背景には、同社が注力する「IoTの進化」のボトルネックとして「電池の問題」が常に横たわっている事実がある。
宮川氏は、IoT時代に電池が重要な役割を果たす用途として、ウェアラブルデバイスやロボティクス、センサーデバイス、産業用ドローン、電気飛行機、宇宙産業/人工衛星などを事例として挙げた。しかし現状だと、ウェアラブルデバイスの1つであるスマートグラスに電池は組み込めず、ポケットに入れた電池ユニットと有線でつなげる必要がある。「Pepper」などのロボットもそばに充電器が必要であり、ドローンも現在の飛行時間で十分とはいえない。IoTシステムで用いるセンサーデバイスも本来は電池交換なしで10年間使い続けたいが、現在は3年程度で電池交換しなければならない。「だからこそ革新電池に投資すべきと考えた」(同氏)。
宮川氏がIoTの進化に必要と考える電池は、最低でも現行のリチウムイオン電池の5倍のエネルギー密度が必要だ。同氏は「その性能を実現するリチウム空気電池の研究開発でトップレベルにあったのがNIMS。しかし実用化については、われわれの求める時期と比べて時間がかかりそうだった。ならば当社が協力すれば加速できるのではないかと考え、今回のセンター開設に至った」と述べる。
NIMS-SoftBank先端技術開発センターは、当初2年間で10億円を研究予算としている。「この2年+αの期間を実用化に向けた基礎固めとなるフェーズ1として想定している。フェーズ1では、A4サイズの電池セルの試作とその性能評価を行いたい。その次の段階であるフェーズ2では、量産も視野に入れて電池メーカーなどの参加も募り、活動を拡大できればと考えている」(宮川氏)という。
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