収集した情報が適切か判断するには次の「7つのムダ排除」の観点を使用すると分かりやすいです
⇒(1)と(2)の観点で、目的の無いデータを収集したり、必要以上に細かい間隔でデータをとったりすることで、膨大なデータ保管を行って余分な管理をしないこと
⇒(3)(4)の観点で、必要な情報を最低限必要な粒度で小まめに通信していること
⇒(5)の観点で、精度が悪かったり、分析できない粒度の情報を収集していたりしないこと
⇒(6)(7)の観点で、情報発生時点で収集できる情報を蓄積する経路の中で、段階的に情報付加したり、計算結果を加えたりして分かりにくくしていないこと。必要情報は最初から収集項目としていること(極力後付けしていない)
まず、余分なデータを極力とらずに必要なデータに絞って収集することです。先ほども述べましたが、できるだけ細かい粒度で細かい間隔でとれば何にでも利用できるといった観点で情報収集を行っているケースが多いようです。
必要なビッグデータは「宝の山」ですが、不要なビッグデータは「ごみ溜め」なのだという理解をしていただくと分かりやすいと思います。今は海外で生産をしているケースが多いです。主力工場が中国やASEAN地区にあり、そこで収集したビッグデータを国内の設計部門で活用したい場合、データ転送に膨大な時間を要するといったインフラ面の問題にぶつかります。こういったことも考慮して、7つのムダ排除の観点での収集項目のチェックをして頂きたいと思います。
今回は、品質保証体制強化へのIoT活用における「全体の概要」と「収集」について説明しました。特に、データ収集する項目や、どの粒度で収集したらよいか、といったことが重要なため、まずそのことについて具体的に解説しました。
通常、「現状業務診断」や「新業務設計」を通じて項目の洗い出しを行いますが、ここでは有識者へのヒアリングや、現状使用している資料の情報の整理にとどまっていることが多いようです。それだけでなく、きちんと全体的な管理のポイント(人作業に焦点を当てる、機械作業に焦点を当てるといったことなど)や後で問題になりやすい点を最初に指摘して対処しておくこと(後工程で発見される前工程不良など)が最も重要なのです。品質問題が定常化している現段階ではぜひ、社内だけでなく外部の有識者も含めて、再度品質保証体制を強化する取り組みも併せて検討して頂きたいと思います。
最近の製造業の現場に足を運びますと「5Sが崩れてきた」と嘆く工場長の声を耳にするようになりました。これも世代交代の影響なのかも知れません。どんなにしっかりしたルールができていても、順守する企業文化と実力を兼ね備えていることが前提となります。
次回は、「データ収集」「ネットワークによる通信」「サーバへの蓄積」のシステム構成や通信方式などの具体例について解説します。
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株式会社アムイ 代表取締役
山田 浩貢(やまだ ひろつぐ)
NTTデータ東海にて1990年代前半より製造業における生産管理パッケージシステムの企画開発・ユーザー適用および大手自動車部品メーカーを中心とした生産系業務改革、
原価企画・原価管理システム構築のプロジェクトマネージメントに従事。2013年に株式会社アムイを設立し大手から中堅中小製造業の業務改革、業務改善に伴うIT推進コンサルティングを手掛けている。「現場目線でのものづくり強化と経営効率向上にITを生かす」活動を展開中。
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