IVIは、2017年度の取り組みの進捗状況と2018年度の方向性について紹介する「IVI公開シンポジウム2018-Spring-」を開催した。本稿ではIVIが取り組んできた地方製造業振興に向けた取り組みを紹介する。
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、2018年3月8〜9日に都内で「IVI公開シンポジウム2018-Spring-」を開催した。
第1回ではIVIの2018年度の取り組みについて、第2回は2017年度から開始した「未来プロジェクト」について紹介した。第3回は地方製造業の振興に取り組む「IVI地域ネットワーク」の2017年度の活動について紹介する。
IVIが目指す「つながる工場」を実現するには、大手製造業だけで取り組んでも実現できない。製造業の作る製品のサプライチェーンには多くの中堅中小製造業が含まれているからだ。IoT(モノのインターネット)活用についてもこれらの中堅中小製造業と一緒に進めていかなければならない。しかし、中堅中小製造業はそもそものIT活用をあまり進めてこなかった企業が多い他、地方などでは十分な情報が得られない場合も多い。
こうした背景から、IVIが2016年度から取り組むのが、IVI地域中小企業ネットワークである。各地の地域推進団体や「モノづくりITサポーター」の支援を得て、2016年度は富山、静岡、神戸、佐賀の4会場、2017年度は富山、加賀、福井、さいたま、静岡、広島、鳥取、大分の8会場でセミナーを開催。IoTなど先進技術を活用した新たなモノづくりの価値について紹介してきた。参加企業数は2016年度が合計71社、2017年度は125社が参加した。規模としては300人以下の企業が全体の70%を占めたという。
IVI 地域ネットワーク委員長の渡邊嘉彦氏(矢崎総業)は「参加企業の6割が金属加工業で、生産の効率化への期待感が高かった。一方で食品業のIoT化への関心も非常に高いということが分かった。食品業はやはり消費期限がある中で品質や在庫、生産計画をどう運用していくのかということへの関心が高い」と参加企業の関心について述べている。
これらのセミナーでは、IVI方式の「緩やかな標準」を策定するシナリオ制作の手順を活用。現状の問題から解決手段や目指す姿のコンセプトを描き、実際にその場面および、関与する登場人物(役者)や活用方法などを詳細に描く。ここまでをセミナー内で実施する。その後、解決につながる操作や情報、モノなどを見極めて、実際に活用するツール選択を行い、実証実験を通じて本当に解決できるかを試行していく。
実証実験はセミナーを主催する地域推進団体が主体的に推進。実際に活用できるフェーズまで持ち込むために、フォローアップセミナーなども各地で開催している。渡邊氏は「セミナーを受けて考え方は理解しても実証実験まで至らないケースも多い。『現場を変えたくない』や『慣れた紙の方が楽』『費用が高額』『固定費増になる』などの点がネガティブな反応として出ていた。これらの障壁を下げるようなフォローが必要だ」と述べる。
これらを乗り越え、実証実験まで順調に進んだ取り組みの中で優秀な取り組みを表彰する「地域アワード」なども実施。最優秀賞は富山のリッチェルが実施した「RFIDタグの可能性の追求」が受賞した。優秀賞は「加工品質を保ちながら工具寿命限界まで使用可能な予兆システム」(富山)、「ウォータジェット加工機の異常停止など通報システム」(埼玉)「稼働管理システムによる生産革新」(鳥取)が受賞している。
次ページでは地域アワード最優秀賞を受賞したリッチェルの取り組みを紹介する。
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