安川電機が描くスマートファクトリーの3つの役割と現在地スマート工場最前線(3/4 ページ)

» 2018年03月26日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

作業外工程をつなぎ、自動化を推進

 ソリューションファクトリー用の生産ラインで取り組んでいるのが、この作業外領域での自動化だ。工程間のつなぎこみや、作業搬送でのAGV(無人搬送車)の活用など、まず搬送部分の自動化に取り組んでいる。

photo 作業工程間の搬送部分に搬送機やコンベヤーなどを設置することで自動化領域の拡大を実現(クリックで拡大)
photophoto プリント基板上のはんだ付け工程の自動搬送装置なども開発(左)はんだ付け装置はポイント式を採用し前準備を省き自動化を実現している(クリックで拡大)

 「搬送領域の自動化」というと、工程間を搬送機でつなぐだけで簡単なようにも見えるが、実際にはそれほど簡単なことではない。従来のように工程間が独立している場合、搬送工程がバッファーとなり、1つの工程での不具合の生産ライン全体への影響度は一定レベルで抑えられていた。しかし、完全に搬送工程までつないでしまえば、接続された生産ラインの全工程が完全に稼働する必要が出てくる。全ての工程が同じタイミングで動かなければ、スループットを高めることはできない上、どこかで不具合が起きれば、ライン全体が止まってしまう。

 白石氏は「作業工程外の自動化を進めていくためには、つなぐ工程全ての信頼性を高めなければならない。試行錯誤しながら実証を進めている」と苦労について述べている。

ロボットに道具を持たせて複数作業を実現

 ロボットに複数作業を担わせる工夫などにも力を入れる。ロボットハンドを定型化し、さまざまな作業ツールをロボットに持たせることでハンド交換などの負担なく複数の作業を行えるようにしている。1種類のハンドで「筐体をセット」し「ドライバーでネジを締める」などの作業を行う。「ロボット活用の負担の1つにハンドの開発があるが、これを共通化し、ツールや冶具の工夫を行うことで複数作業を担わせることが可能となる」と白石氏は述べる。

photophoto 1つのハンドで筐体をつかんでセットし、ドライバーでネジ締めを行うような複数作業をこなせるようにしている(クリックで拡大)

「見える化」と統合コントロールへの期待

 「アイキューブメカトロニクス」の価値として推進するデジタルデータの管理と活用も推進。コントローラーや産業用PCなどエッジコンピューティング領域に搭載するソフトウェア「YASKAWA Cockpit」を活用し、生産状況や装置の稼働状況をリアルタイムにモニターすることを可能としている。

 熊谷氏は「以前から稼働状況の管理などは行っていたが、人手の入力などが必要となり、現場での改善に生かすことは難しかった。リアルタイム情報を見える化できることで、現場での改善活動に生かせるようになり、生産性改善に直結する行動がとれるようになった」と意義について語る。

photo 工場内で表示している生産情報。生産情報を取得し一元的に示すことができる(クリックで拡大)

 生産工程は全てが自動化されているわけではなく人手の工程なども存在するが、人手工程については、RFIDを活用して作業の開始時と終了時を把握できるようにしている。

photo 人手の作業はRFIDカードを一緒のワークと動かすことで作業状況を把握。バーコードリーダーによるQRコードの読み取りと組み合わせて情報を収集する(クリックで拡大)

 現在実証を進め精度を高めているこれらの生産ラインを、今後「ソリューションファクトリー」に持ち込む計画である。白石氏は「場所の都合などもあり描いた形では現在は組めていない状況もあるが、ソリューションファクトリーで新たに組み込むことで解決する問題もある。さらに高品質に高めていく」と述べている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.