ロボット分野のモニター移動ロボット「moniii(モニー)」の開発を行ったのは、豊田市の東亜製作所と東京のベンチャー企業のotuA(オチュア)だ。
東亜製作所はロボット溶接機やクーラント(切削油)浄化装置などを手掛けるFA機械メーカーだ。主にトヨタの生産設備の企画、設計、製造を行っている。また自らが企画、製品化した回転収納式バイクガレージ「motoCUBIC」の販売も行っている。これは90度回転して大型バイクを収納できる省スペースガレージである。ニッチな分野ながらバイク愛好家に好評で、年間60〜70台を販売しているそうだ。取り組んだきっかけはリーマンショックだったとのこと。それまで受注生産のみだったことから苦労したため、自ら動いて販売する製品を持ちたいと企画したという。
一方otuAは多数のロボットのデザインをはじめ、各種デザインやブランディングを行ってきたデザインテクノロジースタジオだ。同社が企画したmoniiiのコンセプトは、360度カメラを備え、自走する巨大なディスプレイだ。「これほど巨大なモニターを持つロボットはないと思う」(オチュア 代表 星野裕之氏)。巨大なサイズによって今までのディスプレイではあり得なかったような価値を提供する。またロボットは人目を引くために人型をしている必要はないともいう。
例えばテレカンファレンスでは、PCのモニターだといくら大きくても存在感がない。また話したい相手の方にモニターを向けるのも一苦労だ。moniiiの大きさであれば、肩まで実物大で表示できるため、そこにいるといえるほどの存在感になる。
また店の入り口や駅でディスプレイ表示を用いることが増えているが、「止まっているものを人はわざわざ見ない。だがディスプレイが動けば、何だろうと振り返る」(東亜製作所 代表取締役の光岡主税氏)。場所を変えながら学習し、最も効果のある場所を自ら探す看板もあり得るだろうという。
他にも自動車ディーラーの営業マンの仕事のうち、デザインなど専門性の高い部分についてはデザイナーのコンテンツを作り、モニターが顧客とともに車の周囲を回りながら紹介するといった、質の高いプレゼン用に使うこともできる。
まだ自分で動くことはできないが、将来的には自走式にしたいという。「ディスプレイなので、幅広い業界で使用できる。音声認識や案内などにも使えるだろう」(星野氏)。
moniiiは役立つだけでなく愛されるロボットを目指したいという。そこで園児にmoniiiの“顔”を考えてもらうワークショップを行った。「顔を考えることを通して楽しんでもらえれば記憶として残るだろう。それをきっかけとして、将来のモノづくりを担う人になるかもしれない」(星野氏)。
3月からお茶の水ソラシティ(東京都千代田区)にあるデジタルハリウッド大学の校舎で実証実験を行う予定だ。元オフィスの建物なのでオフィスを想定した実証に向くという。
発表会の最後に、とよたイノベーションセンター コーディネーター長の松崎永志氏はまず「豊田市は製造従事者の約9割が何らかの形で自動車に関わるという特異な市である」と豊田市の特徴について強調する。
さらに「豊田市の経営者に今一番の悩みを聞くと、人手不足を挙げる。その解決に役立つのが生産性向上となる。具体的に言えば今回の事業のキーワードであるIoT、AI、ロボットの活用となる。そういう面で、今回の発表は非常に興味深くワクワクする活動だと感じた。2018年度も取り組みを継続する予定だ。市外のベンチャーと組んで新しいものを生み出したい企業は、ぜひ参加してほしい」と呼び掛けた。
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