IoTの活用が広がりを見せていますが、上手に活用すれば製品品質の向上につなげることも可能です。本連載では、最新の事例を紹介しながら、IoTを使って製品の品質をどう向上させるかについて説明していきます。第3回となる今回は、MESを使ったトレーサビリティーについて解説します。
製造業のおけるIoT(モノのインターネット)活用は、作業効率化などの面で広がっていますが、「見える化」などの次のステップとして、製品品質の向上を実現することも可能です。本連載では、製品品質向上にIoTをどう活用すべきかについて解説しています。
前回の「IoTで品質向上を実現するためにはどういう考え方やツールが必要か」では、IoT、IoP、IoHに必要なツールを紹介しました。第3回となる今回はその中でも位置付けが重要になってきている「MES」について紹介します。
IoT環境が広がり、製造業の各工程もデジタル変革が求められるようになる中、MES(Manufacturing Execution System)は、従来以上に重要なソリューションになってきています。図1にエンジニアリングチェーンおよびサプライチェーンに関する製造ITシステム環境を示します。
MESは、生産管理や基幹系システムなどの計画層と、製造装置などを制御する制御層の間に位置し、生産資源の配分の最適化や工程の管理、現場情報の収集などを行っています。以前のMESは主に生産現場でのリソースの投入実績収集が目的となっていましたが、最近のMESはミリ秒単位でデータを取得し、製造情報基盤などとデータのやりとりを行います。
特にインダストリー4.0やIoTなどにより、現場情報を活用する動きが広がっていますが、MESはこの現場情報を集計するのに使われています。現場の自動機械に付けられたシーケンサーやPLC(Programmable logic controller)から取得したデータを、直接MESに取り込み、そのデータをリアルタイムで集計します。ある製品を特定の条件で生産すると、設備停止や製品不良が増えてしまったような場合、そのデータを使って、不良が発生しやすい製品群を外すような使い方をします。
また、最近話題の多い品質不良の問題に対しても、発生時の原因分析に必要な製造実績情報のトレーサビリティーを確保する役割を担います。現場での製品材料、製造した工程(設備や条件)、人、現場環境などの情報のトレーサビリティーを取るのは当然です。しかし、それだけではなく設計したプロセス、どのデザインレビュー段階で見逃したのかまでトレースすることも先進企業では実施しています。その場合、PLM(Product Lifecycle Management)の機能が重要です。PLMを使ったトレーサビリティーを実施するには、図1にも示している以下の4つの機能が重要になります。
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