理化学研究所は、2匹のラットを使って、自己と他者が空間のどこの場所にいるのかを認識する仕組みを発見した。海馬の場所細胞は、自己と他者の場所を同時に認識していることが明らかになった。
理化学研究所は2018年1月12日、脳科学総合研究センターシステム神経生理学研究チーム チームリーダーの藤澤茂義氏らの共同研究チームが、自己と他者が空間のどこの場所にいるのかを認識する仕組みを発見したと発表した。海馬の「場所細胞」は、自己と他者の場所を同時に認識していることが明らかになった。
従来の研究では、自己の位置を認識する仕組みは分かっていたが、自己以外のもの、例えば空間上のどの位置に自分が見ている他者がいるのかを把握する仕組みは解明されていなかった。
今回の研究では、自己と他者のそれぞれの空間上の位置を海馬の場所細胞が同時に認識していることが分かった。同成果は、どのように自己や他者の空間情報を認識しているかを解明する重要な知見となる。
共同研究チームは、まず、自己ラットと他者ラットの2匹を用意し、他者ラットの動きを観察することで報酬がもらえる場所を知ることができるという他者観察課題を学習させた。この時の自己ラットの海馬の神経細胞の活動を、超小型高密度電極を使って記録した。
その結果、海馬に自己の位置を認識する標準的な場所細胞と、他者の位置を認識する神経細胞が存在することが分かった。特に場所細胞の中には、自己と他者の場所を同時に認識する細胞が多く、これを「同時場所細胞」と名付けた。
同時場所細胞の中には、他者の場所情報に強く反応する「他者場所細胞」や、自己でも他者でも、その場所に存在するものがあると活動する「共通場所細胞」などがあることも発見した。
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