九州大学は、聴覚の錯覚を用いて時間知覚/判断に対応するヒト脳内での神経活動を解明し、ネットワークモデルを提唱したと発表した。新しいリアルタイム処理技術や、脳機能診断検査への応用が期待される。
九州大学は2017年9月13日、聴覚の錯覚を用いて時間知覚/判断に対応するヒト脳内での神経活動を解明し、ネットワークモデルを提唱したと発表した。同大学大学院 医学研究院 教授の飛松省三氏の研究グループと芸術工学研究院 教授の中島祥好氏が、理化学研究所 情報基盤センター 専任技師の竹市博臣氏と共同で行ったもので、成果は英科学誌「Scientific Reports」電子版で同月12日に掲載された。
音声言語や調和のとれた身体運動、音符や休符といった音楽のパターン認識に1秒未満の短い時間の知覚/判断が重要となるが、実際に知覚、判断する時間には物理的な時間とは異なるさまざまな錯覚があることや、脳内メカニズムに未解明の部分が多いことなどの解明のため、今回の共同研究が行われた。
研究グループは、独自の心理現象「時間縮小錯覚」を用いた脳磁図計測を行い、高時空間解像度で実際に知覚、判断する時間に対応した脳の働きを捉えた。その結果、右半球側頭頭頂接合部(TPJ)が時間間隔への注意と時間間隔の符号化を、右半球下前頭皮質(IFG)が時間判断を司っていることを明らかにした。
また、中島氏が提唱した錯覚の仮説と、時間判断を行うために音を聴き終った直後のIFGの神経活動の高まりが合致。今後、時間知覚判断の脳内ネットワークを理解することで、新しいリアルタイム処理技術が生まれる可能性が考えられる。
単純な3つの音に挟まれた2つの時間間隔の異同を判断する課題については、作業記憶などさまざまな機能が必要となることから、発達障害や認知症の診断マーカーなど脳機能診断検査への応用が期待される。
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