またIoT導入における大きな課題としてセキュリティが挙げられることが多い。グローバルの調査結果でも、IoT導入範囲の拡大に伴う懸念事項のうちセキュリティ侵害がトップの18%を占めた。しかし、1万台以上のコネクテッドデバイスを所有する企業については、セキュリティが最重要課題とした割合は7%にすぎなかった。阿久津氏は「セキュリティが阻害要因になっているわけではない。日本企業はセキュリティをIoTに取り組まない言い訳にしていないか」と指摘する。
IoT導入範囲の拡大に伴う懸念事項。トップはセキュリティ侵害だが、1万台以上のコネクテッドデバイスを所有する企業については、セキュリティが最重要課題とした割合は7%にすぎなかった(クリックで拡大) 出典:ボーダフォン日本とグローバルとの5年の差を埋めるのにはどうすればいいのだろうか。阿久津氏は「まずIoT導入のゴールを明確にすべきだ。IoTそのものが目的になっていないか。IoTはそのゴールに向けた手段にすぎない」と述べる。
また、企業におけるリーダーシップにも課題があるという。「トップダウンで経営者が何の目的でIoTに取り組むかを社員にコミットメントして、推進するための姿勢、意識、体制を作れるかが重要だ」(阿久津氏)。
日本企業、特に製造業は最新技術を組み合わせて新しい価値を生み出すことは得意だ。PoCを実施する技術的な裏付けもある。阿久津氏は「ただし、そこで得られたデータからビジネス化に結び付けるのに時間がかかってしまう。非常にもったいない」と語る。「日本の製造業の経営者は、品質を挙げればモノが売れるという成功体験があるので、IoTで生み出すサービスなどに手を広げることが難しい。先ほど話したトップダウンが難しいのであれば、現場発のIoTという形でボトムアップで行くしかない。既に幾つかそういったタイプのプロジェクトも進んでおり、そういった取り組みが日本で新しい流れを作るのかもしれない」(同氏)としている。
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