ボーダフォンが発表した「2017-2018年度版IoT普及状況調査レポート」によれば、アジア太平洋地域の企業がIoTの導入で世界をリードしているという。しかしアジア太平洋地域に含まれる日本が、IoTの導入率で世界をリードしているイメージはあまりない。同社の阿久津茂郎氏に、日本におけるIoTの普及状況について聞いた。
ボーダフォン(Vodafone)が2017年11月に発表した「2017-2018年度版IoT普及状況調査レポート」によれば、アジア太平洋地域の企業がIoT(モノのインターネット)の導入で世界をリードしているという。同地域におけるIoTに接続されたデバイスを利用する企業の数は、2013年の12%から2017年は3倍の36%に増え、IoTの導入率で世界をリードしている。
例えばアジア企業の77%が「IoTは業務に不可欠である」と認識し、アジア人回答者の88%が「過去12カ月でIoTソリューションの利用を拡大した」、アジア企業の53%が「IoTによる市場競争力を強化できた」、同42%が「接続デバイスを1000台以上保有」、同53%が「大幅な投資収益率向上を達成」と回答している。
また今後の展望でも、アジア企業の91%が「IoTは今後5年間でより広範な経済に非常に大きな影響を与える」、同79%がセキュリティやプライバシーに関する懸念が軽減するにつれ「IoTの利用が増加する」、同91%が異業種間の連携によりIoTの共同ソリューションが生み出される」、同89%が「AI(人工知能)と機械学習は2022年までに一般化する」と予想している。
しかしアジア太平洋地域に含まれる日本については、IoTが注目されていることは確かだが、IoTの導入率で世界をリードしているイメージはあまりない。特に日本の産業をけん引する製造業のIoT活用は「まだこれから」という印象だ。
では日本におけるIoTの普及状況はどうなのだろうか。ボーダフォンの調査はグローバルを対象にしており日本市場だけの数字は公開していない。そこで、ボーダフォンに日本法人であるボーダフォン・グローバル・エンタープライズ・ジャパンのIoTジャパン カントリーマネージャーを務める阿久津茂郎氏に聞いた。
ボーダフォンはIoT普及状況調査を2013年から5年連続で実施している。2013年は「M2M普及調査」として行われていたころのIoT普及率はグローバル平均で12%だったが、5年目の2017年は29%に伸びた。阿久津氏は「2017年の日本市場については、他の調査で12%という数字が出ている。つまり、グローバルに比べて5年ほど遅れているのが実情だ」と語る。
日本市場ではIoTの重要性は十分の認識されており、将来的な成功にIoTが重要になると考えている企業も多い。「しかし、日本の企業は勉強が好きなので、IoTが重要なことは既によく分かっている。しかし、IoTをどれだけ身近に使えるかが課題であり、経営者がビジネスにどう活用するかを考えているかという観点では海外とギャップがある」(阿久津氏)。
阿久津氏が懸念しているのが、日本市場で多数見受けられるPoC(概念実証)止まりになりがちなIoT活用の取り組みだ。阿久津氏は「目標を想定してPoCをやらないことが多いためか、PoCレベルの規模のままやり続けている。PoCを止めるという決断もしていないのではないか」と述べた上で、IoT導入規模とROI(費用対効果)の関連性の調査結果を紹介した。
IoTプロジェクトで扱うデバイス別に、IoTが顕著なROIをもたらしたと考えるアダプターの割合を見ると、PoCレベルとなる100デバイス未満が28%にとどまっているに対し、100〜1000デバイスが51%、1000〜5万デバイスが66%、5万デバイス以上が67%となっている。「IoTは広がれば広がるほどROIが出る。導入するしないよりも、リアルにどう広げていくかが重要だ」(阿久津氏)という。
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