身につけて気にならないスマートウォッチとは? ソニーは「腕時計」を目指した組み込み開発ニュース

ソニーはスマートウォッチ「wena wrist」シリーズの新製品を発売する。ベルト2種類とヘッド3種類を追加し、好みや必要な機能に合わせて組み合わせを楽しめるようにした。

» 2017年12月08日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
スマートウォッチ「wena wrist」シリーズの新製品を発売(クリックして拡大)

 自然に身につけられるウェアラブルデバイスを――。ソニーは2017年12月7日、東京都内で会見を開き、スマートウォッチ「wena wrist」シリーズの新製品を発売すると発表した。

 wena wristは腕時計のベルト部分にスマートウォッチとしての機能を持たせ、従来の腕時計の文字盤(ヘッド)と組み合わせることで違和感なく快適に身につけられるようにした製品だ。ベルトのみを購入することも可能で、wena wristとは無関係の手持ちのヘッドと組み合わせることもできる。

 今回発売するのは、ベルト2種類とヘッド3種類だ。ベルトは金属製のものと、ヘッドなしでも利用できるシリコンラバーのタイプを用意。腕時計らしい装着感を追求するため、先代モデルからベルトの幅と厚みを少なくし、25%の小型化を達成した。

 ヘッドは時計メーカーから供給を受ける。シチズン製の機械式ヘッドの他、見え方や質感にこだわったソーラー充電方式のタイプをそろえる。先行して発表した革製ベルトや女性向けの細身のヘッドも含めると、用途や好みに合わせてさまざまなパターンで組み合わせることが可能となる。

ベルトや文字盤のさまざまな組み合わせが楽しめる(クリックして拡大)

腕時計とスマートウォッチを2個付けしていたあの頃

ソニーの對馬哲平氏。左手にはwena wrist(クリックして拡大)

 「かつて私は片方の腕に腕時計を、もう片方の手首にスマートウォッチをつけていました。腕時計の情緒的な価値も、スマートウォッチの機能面での価値もどちらも欲しかったのです。周囲からは変な奴だと思われていたことでしょう」(ソニー 新規事業創出部 wena事業室 統括課長の對馬哲平氏)

 製品名のwenaは「Wear Electronics NAturally(エレクトロニクスを自然に身につける)」というコンセプトに由来する。シリーズ最初の製品は2016年6月に発売した。新製品の投入により、ベルトのラインアップは金属製の「pro(プロ)」、シリコンラバーの「active(アクティブ)」、革製の「leather(レザー)」の3種類となる。

有機ELディスプレイに情報を表示する。写真では電子マネーの残高を示している(クリックして拡大)

 機能面が最も充実しているのはアクティブで、活動量計としての機能を強化している。プロの活動量計としての機能は、歩数や消費カロリー、睡眠の状態などの記録にとどまるが、アクティブにはGPSと光学式心拍センサーを搭載し、移動距離や平均速度、心拍数などを計測できる。

 また、アクティブとプロは共通して、着信などスマートフォンからの通知や、FeliCaによる電子マネーでの支払いに対応している。スマートフォンからの通知は、バンド部分の有機ELディスプレイに表示される。発信相手の名前や、SNSから受信した本文の一部、電子マネーの残高などを確認できる。防水性能はプロが5気圧、アクティブが3気圧。

ベルトの内部にあるスマートウォッチとしての部品(クリックして拡大)
レザーベルトの中身。FeliCaモジュールのみ内蔵で充電不要とした(クリックして拡大)

 レザーはFeliCaによる電子マネーでの支払いに機能をしぼって、腕時計のベルトにしか見えないデザインを実現。アクティブやプロのようにバッテリーは搭載せず、FeliCaモジュールのみ内蔵している。FeliCaモジュールはベルトの曲げ伸ばしに対する強度を確保するとともに、IPX7相当の防水性能にも対応した。電子マネーだけで構わないというニーズは女性から特に多く寄せられたという。

 いずれのベルトも交通系電子マネーは利用できない。「ハードウェアとしては対応できるだけの性能はある。関連企業との協議を続けていく」(ソニーの説明員)。

外したくならないウェアラブルデバイスへ

 金属製ベルトのプロは、旧モデルと比較してベルト幅を2mm短縮して20mmとし、厚みも従来より低減。より腕時計らしいデザインを追求した。ベルトの腕時計らしい自然な曲面に合わせて収まる基板を設計したことによって実現している。1つ1つの電子部品を基板の両面に適切に配置する点にソニー社内での苦労があったという。

ベルトを腕時計らしくするため、ベルトの曲面に収まるよう部品のレイアウトにこだわった(クリックして拡大)

 これにより、ヘッドの付け根からベルトにかけて幅を狭めるデザインも可能になった。「腕時計のベルトの多くは、ヘッドからベルトにテーパードラインになっている。フォーマルな金属製ベルトがストンとした同じ幅であることはあまりない。より腕時計らしいことを重視した」とソニーのデザイナーは説明した。

 ただ、「普通の腕時計と比べるとまだベルトの厚みが気になる」(ソニーのデザイナー)とし、小型化は今後も開発課題となるようだ。腕時計らしさにこだわることで、“外したくならないウェアラブルデバイス”を追求していく。

 wena wristを実際に身につけてみると、プロのベルトは女性には大きく重過ぎるように感じた。大きめの腕時計は女性向けファッションの流行の1つであり、格好としては不自然ではないかもしれないが、細身の腕時計に慣れている人には特に違和感が大きいだろう。サイズや重さが気になると、ベルトの選択肢が単機能のレザーしかないのが惜しい。

記者(女性)が装着するとこうなる。手首は細い方ではないが、それでも大きさや重さが気になった。身につけた実機は展示品のため、表示は有機ELディスプレイではなくシール(左、中央)。女性向けデザインのヘッドと金属製ベルトを組み合わせたイメージ(右)(クリックして拡大)

 発売日はベルト、ヘッドともに2017年12月21日。ベルトのアクティブのみ2018年3月上旬の発売を予定している。市場推定価格はベルトのプロが3万5000円から、アクティブが3万円前後。ヘッドは機械式が5万4000円から、ソーラー充電方式が3万3000円からを見込んでいる。

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