ソニーを定年退職後、DMM.make AKIBAで若手のサポートを行う“技術顧問”がいる。「モノづくりの復権」という志を胸に、長年の知識と経験で若手を導く阿部潔氏に話を聞いた。
総額5億円の機材を利用でき、新たなモノづくりの現場として注目され続けているDMM.make AKIBA。2014年11月のオープン以来、Cerevoなど13社のモノづくりベンチャーがオフィスを構えることでも知られている。
そんなDMM.make AKIBAには、若きエンジニアたちを支える「技術顧問」がいる。ソニーを定年退職後、「モノづくりの復権」を目指してDMM.make AKIBAの技術顧問に就いた阿部潔氏だ。
阿部氏は1977年よりソニーで回路設計を担当。FMチューナーや日本語ワープロ「HiTBiTWord」、「Produce」などの開発に携わり、「VAIO」の立ち上げにも関わった。2010年の定年退職後は、数年小さなメーカーを手伝い、DMM.make AKIBAの立ち上げとともに現職。長年培ったモノづくりの経験を生かし、入居するベンチャー企業からの幅広い相談に答えることが主な仕事だ。
DMM.make AKIBAに入居している企業は、いわゆる大手メーカーと異なり、自社で工場を持たないファブレスベンダーがほとんどだ。阿部氏は「製品企画を自社で行うものの、製造は外部に委託することが当たり前になりました」と過去との違いを振り返る。これは誰もがモノづくりに参入できるようになった理由でもあるが、同時に大きな落とし穴ともなっている。
「委託業者は、発注された仕様書通りに製品を作ります。つまり、試作段階で『防水に問題はないか』『強度は大丈夫か』など、条件を洗い出した上で仕様書に落とし込まねばなりません。これはほとんど、1からモノを作ることと同じです」
顧問として接した企業の中でも、量産のタイミングで「法基準を満たしていなかった」「選定した部品コストが高すぎた、設計からやり直しだ」と壁にぶつかったケースが幾つもあった。こうした“リスク回避”の知識は経験からしか得られない。
「例えば、電池ケースの選定1つを取ってもいろいろなノウハウがあります。利用者の中には、電池のプラスマイナスを逆に入れてしまう人もいるかもしれない。こうした危険性を無くすため、逆に入らないようなでっぱりが付いているケースを選ばなければならないんです。これを知らないと、安価だからといって安全性の低いケースを選んでしまうことになる。小さな違いでも、見えないワナがモノづくりには潜んでいるんです」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.