「CEATEC JAPAN 2017」の特別カンファレンスにファナック 代表取締役会長 兼 CEOの稲葉善治氏が登壇。「IoTによる知能化工場への挑戦」をテーマに同社のFIELD systemを中心とした取り組みを紹介した。
「CEATEC JAPAN 2017」(2017年10月3〜6日、千葉県・幕張メッセ)の特別カンファレンスでは、ファナック 代表取締役会長 兼 CEOの稲葉善治氏が登壇。「IoTによる知能化工場への挑戦」をテーマとし、新たに2017年10月2日に国内提供を開始した同社の「FIELD system」を中心とした「工場の未来像」に向けた取り組みを紹介した。
産業用ロボットやCNC(Computerized Numerical Control)などの製造機器メーカーであるファナックは山梨県忍野村の富士山麓に本社を置く企業である。社員数は約6700人で売上高5300億円、経常利益1700億円、純利益1300億円という日本有数の優良企業であるといえる。
中心となる製品は工場の自動化、ロボット化を実現する製造機器が大半だ。さらに全ての製品を日本国内で製造していることも特徴である。国内には34の工場を保有するが、その中では同社製品の生産のために、同社製のロボットが約3600台(今後4000台までに増やす計画)使用されているという。
国内工場における生産能力は月産6000〜7000台だが、世界的な需要の拡大に伴い、現在建設中の第3ロボット工場の稼働で生産体制を増強する計画。今後、月産1万1000台に引き上げるという(※1)。
(※1)関連記事:茨城県筑西市にロボット生産工場を建設、月産4000台を予定
ファナックの顧客は製造業および工場である。工場では最も重視しているのは「工場を止めない」ということである。そこでファナックの製品やサービスも「工場を止めない」ことにどう貢献するかということを大事なポイントだと置いている。
これを実現させるためファナックでは製品開発の方針として「壊れない」「壊れる前に知らせる」「壊れてもすぐ直せる」の3つをスローガンに掲げる。このスローガンのもととした製品開発に加えて「サービスファースト」の方針を掲げ、世界45カ国、250以上のサービス拠点を展開し、保守点検の体制も整備にも力を注ぐ。このように同社は製造とサービスを合わせた「One FANUC」をキーワードに顧客満足度を高めることを目指している。
現在、世界の製造業は労働人口の減少とそれに伴う人件費の高騰が起こり、生産現場での自動化の要求は日増しに拡大している。工場ではそれに加えて、予防保全(突然止まらない工場)、加工条件の最適化、セルの最適化、現場スキルの自動化などの課題が表面化し、それを解決するためIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を積極活用する動きが活発化してきた。
「IoTにより、各構成要素の機械をつなぎ、そのつないだ機械から多様な情報を手に入れることができる。それをいかに周知し、個々の最適から、つないだ機械全体の最適を図れる時代となってきた。熟練作業者の技能が消滅してしまう前に、熟練の技をいかにデジタル化して、広く使えるようにするということもIoTとAIの活用で、近い将来実現できるよう目指しており、これらの取り組みで、より効率の良い工場を作っていく」と稲葉氏は語る。
IoTではクラウドコンピューティングが主流となるが、情報量が膨大な生産現場では、クラウドで処理するにはスピードの問題などがある。ファナックでは現場での高速性を確保するためにもリアルタイム性が高く、自律分散であり、通信コストの削減が図れ、しかも多くのデータをエッジ側で処理できる「エッジヘビー(Edge Heavy)」の考え方を重視している。
今回、同社がこのほど国内で運用サービスを開始した「FIELD system (FANUC Intelligent Edge Link & Drive system)」は、この考えを具現化したシステムとなっている。
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