他方、FDAは、ソフトウェア事前認証プログラムについて、図3に示すような形のアプローチを示し、パイロットプログラムの開発を進めている。FDAとしては、ソフトウェアの設計、開発、バリデーションなど、客観的な基準に基づき、品質や組織の卓越性を示すデジタルヘルス開発企業をあらかじめ認証することによって、審査プロセスの簡素化と負荷軽減を図ろうとしている。
FDAは2017年8月1日、デジタルヘルスソフトウェア事前認証プログラムに関するWebセミナーを開催した(関連情報)。その中での注目されるのが、本連載第20回で取り上げた「ソフトウェア・アズ・ア・メディカル・デバイス(SaMD)」だ。
SaMDの臨床評価ガイドラインについては、国際医療機器規制当局フォーラム(IMDRF)のSaMDワーキング・グループが、欧州のアプローチに従い、スタンドアロンのソフトウェアを医療機器として規制するためのルールをとりまとめてきた歴史的経緯がある。これに対して米国は、複雑に相互接続されたオープンな環境下で稼働し、迅速かつ効率的に変更や修正を行うことが可能なソフトウェアを想定し、一歩踏み込んだ表現のガイドライン草案を策定してきた。
図4は、FDAが示したSaMD向けの事前認証プログラムの概要を示している。
FDAは、「品質や組織の卓越性の文化(COOE)」を示す要素の例として、以下のような項目を挙げている。
FDAは、これらの要素をベースに、組織的リソース、顧客、学習と成長、内部プロセスの観点から、重要業績評価指標(KPI)を集約したSaMDの評価基準フレームワークを構築する方向性を示している。パイロットプログラムの段階的なアプローチは、2017年9月〜2018年9月にかけて実施される予定だ。
なお、本連載第17回で医療機器規制のEU域内統一化に向けた動きを取り上げたが、2017年4月5日、欧州委員会が「医療機器指令」と「能動埋め込み型医療機器指令」を統合した「医療機器規則」と、「体外診断用医療機器規則」を採択し、前者は3年間の移行期間を経て2020年春より、後者は5年間の移行期間を経て2022年春より適用開始となる予定である(関連情報)。EUの新たな医療機器規制におけるデジタルヘルスの取扱いや、EU-米国間のハーモナイゼーションの観点からも、FDAの今後の動向が注目される。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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