パナソニックが新デジタルサイネージソリューション「AcroSign」について紹介。AcroSignの事例として、体験型エンターテインメント公演「フエルサ ブルータ」の劇場エントランスやロビーの空間演出に用いている技術を説明した。
パナソニックは2017年8月3日、東京都内で会見を開き、新デジタルサイネージソリューション「AcroSign」について紹介した。また、報道陣向けに、AcroSignの事例として、体験型エンターテインメント公演「フエルサ ブルータ」の劇場エントランスやロビーの空間演出に用いている技術を説明した。
国内のデジタルサイネージ市場は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、インバウンド増に伴い需要が急拡大している。パナソニックはデジタルサイネージで15年以上の実績を有しており、国内シェアもトップだ。2016年からは、デジタルサイネージの需要増と多様化に向けてソリューション展開を推進するため、AcroSignという名称でブランド化している。
AcroSignのコンセプトは「あなたの“届けたい”を『画面』から『空間』へ」だ。パナソニックシステムソリューションズジャパン(PSSJ) クラウド・サービス事業センター IoTプラットフォーム部 部長の佐村智幸氏は「デジタルサイネージというと長方形のディスプレイに映像が流れるイメージが強い。しかし現在は、多様なコンテンツを、オンプレミスやクラウドを含めた最適なシステムで、さまざまなデバイスに配信することが求められている。パナソニックは、ディスプレイやプロジェクターに加えて、照明なども使って『画面』だけではなく『空間』を演出できる。このことを強みとして事業展開を進めていきたい」と語る。
現時点におけるAcroSignの空間演出の力を集積したのが、2017年8月1日から東京・品川で公演を行っているフエルサ ブルータの最新公演「WA!」だ。主に、エントランス、ロビー、VIP向けラウンジで、さまざまなデジタルサイネージを展開している。
鳥居をイメージしたエントランスの演出には、34台のディスプレイと床面のLEDディスプレイを連動させたコンテンツを展開。ロビーでは、7台のDLPプロジェクターと13台のディスプレイにより大空間の映像演出を体験できるようになっている。DLPプロジェクターは短焦点投影が可能で、凹凸のある壁面へのプロジェクションマッピングを実現した。
映像演出で埋め尽くされているロビーの壁面の一部が暗くなっているが、ここにはインタラクティブな仕掛けが組み込まれている。待ち時間などで退屈しているときにここをのぞき込むと、のぞき込んだ人の顔を認識して「ひょっとこ」や「隈どり」などのAR(拡張現実)を重ねて見せるのだ。
またセキュリティ向けに利用している360度カメラを使って、ロビーの売店前の混雑検知を行っている。混雑していない時には、プロジェクションマッピングのコンテンツがグッズ販促用のものに切り替わる設定になっている。
ロビーから階段を上がった2階のVIPラウンジには、シャンパンで知られるモエシャンドンと提携したカウンターバーがある。ラウンジ内には、スポットライト型プロジェクターである「スペースプレーヤー」を使って、西陣織に映像を投影してその映り方の妙や、3代のスペースプレーヤーでカウンターバーの奥に簡易プロジェクションマッピングを見せていた。
AcroSignを手掛けるPSSJは、2017年4月に発足したコネクティッドソリューションズ(CNS)社のもとで、パナソニック内外の技術やデバイスをつなげてB2Bの顧客向けに価値を生み出すソリューション事業を展開する方針を打ち出している(関連記事:プラットフォーマーになれないパナソニックが描いた“勝ち筋”)。
従来のパナソニックは事業部やカンパニーごとの独立採算による縦割りで、横連携ができないことも多かった。AcroSignの事業展開で、CNS社が新体制となった効果は出ているのだろうか。
佐村氏は「エコソリューションズ社の製品であるスペースプレーヤーを使った空間演出ソリューションは、新体制の効果の1つといえるだろう。全てをサイネージというソリューションにあてはめるという考え方ができ始めている」と述べている。
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