IoT時代のゲームチェンジャーへ、ビジネス革新を進めるコニカミノルタの挑戦MONOist IoT Forum 名古屋(前編)(1/2 ページ)

MONOistを含むITmediaの産業向け5メディアは、セミナー「MONOist IoT Forum in 名古屋 〜先進企業の事例からひもとく製造業『第4次産業革命』の今〜」を開催した。同セミナーのレポートを前後編に分けてお送りする。

» 2017年07月24日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]

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 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの産業向け5メディアは2017年7月20日、名古屋市でセミナー「MONOist IoT Forum in 名古屋 〜先進企業の事例からひもとく製造業『第4次産業革命』の今〜」を開催した。

 本稿では、前編で、基調講演に登壇したコニカミノルタ 執行役 産業光学システム事業本部長 兼 BIC(ビジネスイノベーションセンター)担当の市村雄二氏の講演内容を、後編ではジェイテクト 工作機械・メカトロ事業本部 IoE推進室 技監 青能敏雄氏の特別講演とその他の講演内容についてお伝えする。

コニカミノルタが取り組むビジネス変革

 市村氏は「コニカミノルタのエッジIoT戦略」をテーマとし、同社の取り組むビジネス変革と、製造業がIoT(モノのインターネット)を使って生み出す新たな価値への挑戦について紹介した。

 コニカミノルタは2003年にコニカとミノルタが統合して誕生した。しかし、2006年にはコニカの創業事業であるフィルム事業(フォト事業)、ミノルタの創業事業であるカメラ事業からの撤退を発表。変革を余儀なくされてきた経緯がある。

photo コニカミノルタ 執行役 産業光学システム事業本部長 兼 BIC(ビジネスイノベーションセンター)担当の市村雄二氏

 「コニカの主力事業であったカラーフィルムの世界市場は2000年をピークを迎えたがわずか5年で半減した。その原因となったのがデジタルカメラの登場である。一方でそのデジタルカメラも2010年にピークを迎えた後、わずか3年で半減した。これはiPhoneなどスマートフォンによって引き起こされたものだ。このように、他業界からの参入で一気に市場そのものが壊れることが、あらゆる業界で生まれている。持続的成長を続けるためには従来と異なるアプローチが必要となる。コニカミノルタは課題提起型デジタルカンパニーを目指した」と市村氏は述べる。

 同社が目指す「課題提起型デジタルカンパニー」とは、ビジネス社会や人間社会の進化のために新たな価値を創出し続ける企業である。この目標に向けて、具体的には「付加価値型事業モデルへのシフト」と、「社会的存在価値の向上」に取り組んでいる。

 「付加価値モデルへのシフト」は、顧客の潜在的課題やニーズを把握し、ハードとソフトとサービスの組み合わせで顧客の課題解決を目指すことである。従来のハードだけのモノ売りではなく、課題解決により実現できる「価値」を提供するビジネスモデルへと変革する。一方「社会的存在価値の向上」では、社会が抱える本質的な課題解決に取り組むことで社会、ビジネス、人間生活の質を改善し続けることだ。市村氏は「現在はあらゆる企業が社会的価値を訴求しないと生き残れない時代になっている」と述べる。

脱「自前主義」の象徴であるBIC

 これらを実現するためにコニカミノルタでは2014〜2016年度にかけて中期経営計画「TRANSFORM 2016」を推進。コア技術を核とした新しい価値の創造、現在グループで保有している顧客基盤やグローバル展開力などのアセット(資産)、オープンイノベーションの推進などを組み合わせることで、顧客価値を基軸としたソリューション展開を行えるようにした※)

※)関連記事:「KM流エッジIoT」が進化の源に、コニカミノルタが“仕込み”を成果に変える

 具体的には、モノづくりや商品作りの方法を顧客起点に変更した。従来の製造業のモノづくりは研究開発を行い、インキュベーションで事業価値を検証し、事業開発を行って製品化、事業化するというサイクルとなっていた。ただ、この流れは基本的にはメーカー側から顧客側への一方通行の流れであり、メーカー側の独りよがりな製品やサービス作りになる可能性があった。市村氏が主張するのが「この流れを逆にする」ということである。

 顧客起点で顧客の潜在的課題を探り、それを解決する事業を模索する。そのために必要な技術や資産などは買収や協業などでスピード感を持って獲得し、早期に顧客の課題解決を実現できる体制を構築するというのが描く姿である。技術については、同社がもともと保有する「材料技術」「画像技術」「光学技術」「微細加工技術」をコア技術と位置付ける。これらの組み合わせで新たな技術領域の開拓などを進める一方で、社内にない技術については積極的に買収や協業などを進めていく姿勢である。

 さらにこの顧客起点の姿勢で新たな商材やサービスの開拓を推進する部門として世界5カ所(東京、中国、シンガポール、英国、米国)に「ビジネスイノベーションセンター(BIC)」を設置。新しいプロジェクトを次々に立ち上げているという。「オープンイノベーションを訴えても、日本の製造業はどうしても自前主義が強く、効果的に活用することは難しかった。専門の組織を一気に世界で5カ所同時立ち上げをしたことにより、関連する組織やプロセスなどの変革などにも取り組むことができ成果が生まれてきている」と市村氏はBICの手応えについて述べる。

 現状では、100以上の新たなプロジェクトが動いているというが「その内、約4割が既存ビジネスの近接領域、約4割が既存領域から離れた新領域、そして約2割が誰も判断がつかないような革新領域だ。革新領域は社内では『ムーンショット』と呼ばれており、誰も実現したことがない世界を作り出す取り組みだ」と市村氏は説明する。

 BICでは、スタートアップへの直接投資なども積極的に進めているが「スタートアップに学ぶということが必要だと考えている。ただ、スタートアップに学ぶべきものは技術ではない。私はシリコンバレーに10年いたが、日本企業や研究所が開発した技術よりも優れた技術には出くわしたことがない。技術面では特に学ぶべきものはないと言い切れる。では何を学ぶのかというと、スピードである」と市村氏は強調する。自前主義から脱却し、BICを通じてスタートアップと共に事業を作っていくことで、事業の創造とともに、スタートアップのスピード感を体得することを目指す。

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