こうして新たなるAutomated Driving Roadmapが提示される中、筆者が最も気になったのはTruck Platooing(トラック・プラトゥーニング、トラックの隊列走行)の早期実用化だ。
初日夕方のオープニングセレモニーに次ぎ、実質的なキックオフとなった2日目。この日に実施されたPlenaryセッションと呼ばれるパネルディスカッションの題目は「Smart cities and future ports: What is the role of ITS?(スマートシティーと未来の港:ITSの役割とは?)」だった。
ここではオランダのアムステルダムや、デンマークのコペンハーゲンなどの港におけるトラックの渋滞や駐車場の問題などを議論した。その解決法として、トラック・プラトゥーニングが有効だというのだ。また、ストラスブールもライン川における物流拠点として、トラック輸送と港との関わり合いが強く、地域独自の社会課題も提示された。
トラック・プラトゥーニングに関しては、2016年に「ETPC(European Truck Platooning Challenge)」という実証実験を行ってきた。2018〜2019年にかけてオランダが中心となり、ETPCは「European Truck Platooning real life case」と称する、実用化を念頭に置いた大規模実証へと格上げされる。
トラック・プラトゥーニングに関するセッションで講演したオランダ政府関係者は、搭載する貨物の種類として小売り商品全般、食品、花、コンテナを挙げ、さらに夜間物流を含めた5項目における物流ルートで、2〜3台の大型トラックによる同一車線での自動追従走行(SAE規定で自動運転レベル1)を行うことを説明した。
その後、2020年には車線変更を伴う追従走行(レベル2)の実用化とレベル3及びレベル4の実証試験における研究開発、そして2025年には異なるトラックメーカーの車両によるレベル4の実用化を目指す、「Vision Truck Platooing 2025」の実現に向けた意気込みを語った。
そこで気になったのが“雇用への影響”だ。OECD(経済協力開発機構)の関係者は「労働組合などとの協議を進める」と説明したが、具体的な交渉スケジュールについては明言しなかった。一般的にトラック輸送業におけるコストの5〜6割がドライバーの人件費といわれており、自動化が進むことはドライバーの解雇に直結する問題だ。
また、同セッションの登壇者らが、異なるトラックメーカーの車両への対応について“共通プロトコル”という表現を使った。講演後の質疑応答で、筆者が「カメラ、レーザー、ライダー、さらにV2Xなどのハードウェアの標準化について詳細は決まっていないのか?」と質問したが、登壇者らからは「今後の課題」という曖昧な回答しか得られなかった。
とはいえ、彼らがトラック・プラトゥーニングを社会課題に対する現実解の1つとして、真剣に実用化させようとしている強い意志があることは理解できた。換言すると、欧州における乗用車の自動運転は、ジャーマン3(ダイムラー、BMW、Volkswagen Group)の上位車種から採用する“高級なオプション装備”という意識が強く、ECや各国の行政機関としては事業者にとってコストメリットが明確に提示でき、渋滞緩和に直接的に結び付きやすい大型商用車の自動運転を優先させるということだ。
これは至極当然な考え方であり、日本においても2017年度から新東名/東名高速・常磐道など合計300kmで実施予定のトラック・プラトゥーニングの実証試験において、これを基にした実用化のロードマップを明確に描くべきだと感じた。
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