トヨタ自動車との協業という基調講演でのサプライズを含め、GTC開催4日間で600以上の講演やデモンストレーションが行われた。自動車産業向けの執筆を主業とする筆者としては、その中からDRIVE PX2を活用したサードパーティーによるさまざまな活用事例を中心に講演を選択した。
例えば、中国の百度(Baidu)の講演では、この2週間前のオート上海で公表した自動運転に関する事業戦略「プロジェクト・アポロ」について詳しく説明した。このアポロとは、アメリカが1960年代に推進した宇宙開発プロジェクトから”拝借”したもの。講演の冒頭では、アポロ計画を立ち上げた米国大統領のジョン・F・ケネディ氏の言葉を引用したほどだ。
百度のプロジェクト・アポロでは、高速道路、オートパーキング、そして港湾施設でのトラック輸送などを主要な実施項目に挙げた。技術面では、中国国内で有数の地図情報を提供する企業である百度が開発を進めている3次元高精度地図を基に、DRIVE PX2によるディープラーニングによる車両の位置、白線検知、そして走行の軌道予測の精度が急速に高まったことを強調した。
DRIVE PX2を実装したのは、FCA(Fiat Chrysler Automotive)のJeep「Grand Cherokee」。ドイツRobert Bosch(ボッシュ)との共同開発車両である。中国の高速道路を走行する模様を、衛星写真の中でマッピングしながら走行する様子などを動画で紹介した。
講演した百度の関係者は、CES Asia(2017年6月7日〜9日、上海)で「中国の地場自動車メーカーと協業する自動運転技術の開発動向について発表する」と話した。つまり、中国でも今後、DRIVE PX2が自動運転技術におけるデファクトスタンダードになる可能性がある。
中国地場メーカーにとって、自動車開発全般について“ドイツ信仰”が根強いことは周知の事実だ。つまり、NVIDIAとボッシュとの協業の理由の1つが、中国市場への対応だといえる。
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