千葉大学は、心不全に関わる新しいメカニズムを解明した。心臓をストレスから守るために心臓と脳、腎臓をつなぐ臓器ネットワークと、それにおいて重要な心不全発症の鍵となるタンパク質を発見した。
千葉大学は2017年4月11日、心不全に関わる新しいメカニズムを解明したと発表した。同大学大学院医学研究院 教授の真鍋一郎氏、自治医科大学 学長の永井良三氏、東京大学 大学院 医学系研究科 特任助教授の藤生克仁氏(科学技術振興機構の「さきがけ」にも所属)、九州大学 大学院 理学研究院 准教授の岩見真吾氏の研究グループによるもので、成果は2017年4月10日に、英学術誌「Nature Medicine」電子版に掲載された。
慢性腎臓病など腎臓機能の低下は、心臓病を増やしたり、悪化させることが知られている。逆に、心臓病も腎臓病を悪化させるため、心臓と腎臓はさまざまなメカニズムで関連していると考えられている。
同研究では新たに、心臓と脳、腎臓をつなぐ臓器のネットワークを発見。この臓器ネットワークは心臓をストレスから守る重要なメカニズムで、ネットワークがうまく働かないようにすると、マウスは心不全を発症するようになる。
さらに、この臓器ネットワークは、神経と腎臓由来の生理活性分子(コロニー刺激因子)によってつながっていることが分かった。心臓に負担がかかると脳と神経を介して腎臓が活性化され、腎臓からコロニー刺激因子が放出されて免疫細胞の一種である心臓マクロファージの活性化が始まる。この心臓マクロファージが、心筋細胞の働きを助けるタンパク質「アンフィレグリン」を分泌して、心臓の機能を維持していることが明らかとなった。
また、アンフィレグリンが働かないようにしたマウスは、心不全になりやすかった。さらに、心不全を発症したマウスにアンフィレグリンを投与することで、心不全を改善させることができた。このように、アンフィレグリンが心不全発症の鍵となるタンパク質だと分かった。
同研究による心臓と脳、腎臓をつなぐメカニズムとアンフィレグリンについての成果は、心不全や慢性腎臓病の新しい治療法の開発につながると期待され、実用化に向けて開発を進めている。
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