「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加する「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、取り組みの進捗状況を紹介するIVI公開シンポジウムを開催。今回は、インダストリー4.0に関する国際標準化の動きについて取り上げた「パネルディスカッション スマート製造アーキテクチャ国際標準の行方」の内容を取り上げる。
2015年に6月に活動を本格化させた「Industrial Value Chain Initiative(IVI)」は、さまざまな活動を本格化させている。2017年3月9〜10日に開催した「IVI公開シンポジウム2017春」では、これまでの活動内容とこれからの活動方針について紹介した。今回は、インダストリー4.0に関する国際標準化の動きについて取り上げた「パネルディスカッション スマート製造アーキテクチャ国際標準の行方」の内容について、取り上げる。
インダストリー4.0やスマート工場の動きは、影響範囲が多岐にわたるため、デファクト(市場の要請などによる事実上の標準)、デジュール(国際標準化組織による標準)それぞれでの標準構築が重要となる。
デジュールの動きでは、既にIEC(国際電気標準会議)やISO(国際標準化機構)で「インダストリー4.0/スマートマニュファクチャリング」ワーキンググループ(WG)が立ち上がり話し合いが進められている他、これらを合わせたジョイントWGが開始されるところだ。
パネルディスカッションは、東京大学名誉教授の木村文彦氏をモデレータとし、IECやISOの国際標準会議に実際に参加する石隈徹氏(アズビル)、小田信二氏(横河電機)、小倉信之氏(日立製作所)、茅野眞一郎氏(三菱電機)が登壇した。
モデレーターの木村氏は「モノづくりが変化していく中で標準というものを考えていかなければならない。自動車も工場ももっと自由な世界に進んでいく。さまざまなモノがつながる時代になる中で、標準の軸となる骨格を見通しながら指針を作っていくことが必要になる。新たなWGなど、デジュールの中で議論する動きが広がっているが、パラダイムシフトだけで議論が引きづられるようだといけない」と考えについて述べている。
IECやISOのインダストリー4.0およびスマートマニュファクチャリングの国際標準化に向けた取り組みはやや複雑だ。スマートマニュファクチャリングなど工場内のさまざまな規格については、基本的にはIECでは「TC65」、ISOでは「TC184」という組織で行われている。これらは具体的な個々の技術の規格化などを進めている組織だが、細分化や巨大化しており、技術が複雑に絡み合うスマート工場などの動きを正しく表現することは難しい。
そこで、IECでは「SG(戦略グループ)8 インダストリー4.0/スマートマニュファクチャリング」というWGが設置。「SG8」は2016年6月に「SEG(システム評価グループ)7」へと移行している。一方でISOでは「SAG(戦略アドバイザリーグループ) インダストリー4.0/スマートマニュファクチャリング」というWGが設置され、この中で標準化への議論が進んでいる。
この中でIECの「SEG7」に参加しているのが、横河電機の小田氏である。小田氏は同グループでの議論の内容について「ドイツの『RAMI4.0』や米国の『NISTモデル』などスマートマニュファクチャリングのさまざまなモデルについて、議論している」と述べる。
一方でIECの「TC65」に参加しているのが、アズビルの石隈氏である。石隈氏は「TC65は巨大化し過ぎて、一言でいえばぐちゃぐちゃの状況。バラバラに標準を作る動きが出始めて、それではだめだということでまとめる動きが出始めた」と述べる。具体的には「TC65」内に「TC65 ahG3 スマートマニュファクチャリング」を設置し、関連の規格などを取りまとめる動きを取っている。
また、日立製作所の小倉氏はインダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)に出席する立場から、三菱電機の茅野氏は「IVI」で「IVRA(Industrial Value Chain Reference Architecture)」を推進する立場から、ディスカッションに参加した。
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