トヨタ自動車は、レクサスブランドのフラッグシップクーペ「LC」を発売した。10速ATや「世界初」(トヨタ自動車)とする「マルチステージハイブリッドシステム」など先進技術を採用することにより、運転する喜びを提供するとしている。
トヨタ自動車は2017年3月16日、レクサスブランドのフラッグシップクーペ「LC」を発売した。
デザインの原型となったのは2012年のデトロイトモーターショーで披露したコンセプトモデル「LF-LC」だ。FR(後輪駆動)向けの新開発プラットフォーム「GA-Lプラットフォーム」を生かし、コンセプトモデルを踏襲して低い全高と広い全幅、低重心を実現した。
10速ATや「世界初」(トヨタ自動車)とする「マルチステージハイブリッドシステム」など先進技術を採用することにより、運転する喜びを提供するとしている。税込み車両価格は1300万円から。
LCのラインアップは、排気量5.0l(リットル)のV型8気筒エンジンと10速ATを組み合わせた「LC500」と、排気量3.5lのV型6気筒エンジンとマルチステージハイブリッドシステムを搭載するハイブリッドモデル「LC500h」の2種類だ。LC500hは、V型8気筒/排気量5.0lのエンジンを超える高い発進加速性能を発揮するという。
マルチステージハイブリッドは、FRのプレミアムモデル向けに“もっといいクルマづくり”のための構造改革「TNGA(Toyota New Global Architecture)」に基づいて、燃費性能と動力性能を高次元で両立することを目標に開発した。JC08モード燃費は、マルチステージハイブリッドを採用したLC500hが15.8km/l、ガソリンエンジンのみのLC500が7.8km/l。フラッグシップセダン「LS500h」の新モデルにも採用する。
従来のリダクション機構付きTHS(TOYOTA Hybrid System)IIと、マルチステージハイブリッドの違いは、4段ギアの「システムステージ変速機構」を組み合わせた点にある。システムステージ変速機構はATと中身はほぼ同じで、ハイブリッドシステムに4速ATを追加した形となっている。
これまで、THS IIは2段変速で、全ての車速域を1つの変速ギアでカバーしていた。そのため、エンジンの回転数に対して、駆動用モーターが動作できる回転数には限度があり、「アクセルを踏んでエンジンの回転数が上がっても、思い通りに加速しない」ということが起きてしまう。
マルチステージハイブリッドは変速ギアが4段あり、時速50kmまでを1段目、時速100kmまでを2段目というように、それぞれのギアで車速域を分担できるためダイレクトな加速を実現する。また、低い速度でもエンジンの高回転域を使用できるため、低速でも力強い駆動力を生み出せるとしている。
エンジンの最高出力を使える速度域は従来のTHS IIは時速120km以上だったが、マルチステージハイブリッドは時速60kmからとなる。さらに、LC500hのエンジンは最高回転数を6000rpmから6600rpmに高め、出力を向上している。
マルチステージハイブリッドは、変速機構の配置も従来のTHS IIとは異なる。これまでは駆動用モーターの回転のみを変速していたが、システムステージ変速機構は、駆動用モーターとエンジンの出力が合算された後の出力軸に配置されており、エンジンとモーターの両方のトルクを増幅することができる。
システムステージ変速機構を採用することにより、モーターのみで走行するEV走行の領域も拡大した。平たん路であれば時速100kmまでEV走行が可能だとしている。
THS IIでは駆動用モーターと発電用モーターが「電気式無段変速機」として動作しているが、マルチステージハイブリッドでは10速ATを模した変速制御を行う。10速に入った後は無段変速となり、エンジンの回転数を可能な限り低く抑える。
マルチステージハイブリッドはドライバーの運転意図をくみ取ったシフト制御も行う。アクセルやブレーキ、ステアリングの操作によって発生する前後左右のG(加速度)を基に、走行シーンに合わせて制御する。例えば、ワインディングロードで大きな左右Gが発生すると低いギアを選択したり、モーターのアシストを増やして再加速時の駆動力を高めたりする。
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