理化学研究所は、次世代人工知能基盤を開発する「理研革新知能統合研究センター(理研AIP)」の活動に、東芝とNEC、富士通の3社が参画すると発表した。国内大手電機メーカー3社の参画により「日の丸AI」と見る向きもあるが、理研AIPセンター長の杉山将氏は「AI研究にはもはや国境などない」とその見方を否定した。
理化学研究所は2017年3月10日、東京都内で会見を開き、次世代人工知能(AI)基盤を開発する「理研革新知能統合研究センター(理研AIP)」において、東芝とNEC、富士通の3社それぞれとの間で連携センターを開設すると発表した。連携センターの設置期間は2017年4月〜2022年3月までの5年間。
連携センターと関わる人員や予算規模は、東芝が「約30人の人員とそれに見合った投資」(東芝 研究開発センター所長の堀修氏)、NECが「連携センターは約20人を想定し、NECからは約10人を常駐させる。投資は年間数億円レベル」(NEC 執行役員 中央研究所担当の西原基夫氏)、富士通は「約50人規模で、投資は連携センターに5年で7億円、これと関わる社内分として数十億円を見込む」(富士通 取締役 AI・メディア・セキュリティ事業化担当兼知識情報処理研究所長の原裕貴氏)となっている。連携センターの発足による理研AIPの人員規模や予算などについては、現時点では非公表とした。
2016年4月に設立された理研AIPは、理研AIPセンター長の杉山将氏を中心に研究体制の整備を進めており、その一環として、研究開発成果の実用化を加速するため産業界との連携を検討してきた。これまでに、東芝とNEC、富士通の3社と具体的な研究テーマや実施計画を議論し、その結果として今回の連携センターの設置で合意したという。
3社が連携センターで行う研究課題はそれぞれ3つずつ設定されている。東芝は「プラント生産性向上」「知的生産性向上」「モビリティ自動化・ロボット化」、NECは「少量の学習データ高精度を実現する学習技術の高度化」「未知状況での意思決定を支援する学習/AI技術の高度化」「複数AI間の調整に関わる強化学習の理論的解析」、富士通が「ロバストな機械学習」「シミュレーション・AI融合」「大規模知識構造化」である。
東芝の堀氏は「実践可能な生産現場や郵便区分機以来培ったメディア処理技術、社会インフラのビッグデータとドメイン知識、エッジコンピューティングを支える半導体技術など、現場の豊富な設計・製造データや知見を有効活用して『東芝ならでは』のAIを生み出したい」と語る。
NECの西原氏は「AIには『人を超える認知』『人を超える発想』『人を超える最適化』という期待がある。しかしビッグデータを前提とする従来のAIでは全てを実現できない。理研との連携センターでは、従来AIでは困難な課題の解決に挑戦する」と述べる。
富士通の原氏は「当社の連携センターは、人が幸せになるAI、自律成長と人との協調による課題解決を目指す。そして社会インフラ、ヘルスケア、モノづくりなどの分野に活用していきたい」と説明する。なお、AIPは、富士通のAI研究専用システム「ディープラーニング解析システム」を採用している。
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