2017年2月9日、ATAは、遠隔医療の標準化と診療報酬支払に関する報告書2本を公表した(関連情報)。
そのうち「州の遠隔医療ギャップ分析:適用と報酬支払」(関連情報、PDFファイル)と題する報告書では、全米50州とワシントンD.C.における遠隔医療の保険適用と報酬支払に関する概況が掲載されている。
同報告書では、以下のような点が指摘されている。
現在、日本国内では、遠隔診療の保険診療報酬適用について、中央社会保険医療協議会(中医協)などで活発な議論が行われている(関連情報)。日本の遠隔医療推進策定時に、米国の経済インセンティブが参照モデルとなるケースは多いが、地域によって経済的・社会的・技術的背景が異なる点を考慮する必要がある。
他方、「州の遠隔医療ギャップ分析:医師の診療基準と免許」(関連情報、PDFファイル)と題する報告書では、医師と患者の対面関係、テレプレゼンターの要求事項、インフォームドコンセントの要求事項、免許と州外診療、インターネット処方の各項目について、全米50州およびワシントンD.C.の地域比較分析した結果をまとめている。
この報告書では、以下のような点が指摘されている。
テキサス州は、対面診療と比較して、厳格な遠隔診療基準を設定しており、その影響で医師と患者の対面関係に関する評価が低くなる傾向がある。また、テレプレゼンターに関して、テキサス州は医療専門家の介入を要件としていないため、その影響を考慮する必要がある。
インフォームドコンセントに関しては、ATAと州政府医療委員会連盟(FSMB)が、遠隔医療の要件として組み込むよう働きかけを行っており、今後、他州に広がる見通しだ。現在日本では、改正個人情報保護法本格施行に向けた取組が行われているが、遠隔医療の場合、過去の患者データを活用して診療や予防指導を行うケースが十分想定される。複数の医療施設や外部委託先が関わる場合など、特に注意を払う必要があるだろう。
昨今、米国の大統領選挙を通じて、中西部地域と大西洋岸中部地域の一部に渡るいわゆる「ラストベルト」が注目を集めたが、米国遠隔医療学会の報告書をみると、まだら模様のような進捗状況を示している。ベビーブーマー世代の高齢化が進行するこれらの地域で、遠隔医療が普及するか否かは、トランプ政権の保健医療政策を占う上でも注目される。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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