理化学研究所と名古屋大学の共同研究グループは、複数のブローブを同時に追跡できる新型のPET装置「MI-PET(multi-isotope PET)」を開発した。1度の検査で複数の疾患を調べることができ、被験者の負担を軽減して診察精度を向上できる。
理化学研究所は2017年2月15日、PET(陽電子放射断層撮影法)に利用するプローブが複数種類になっても同時に追跡できる、新型のPET装置「MI-PET(multi-isotope PET)」を開発したと発表した。
PETでは、陽電子を放出する陽電子放出核種を使ってプローブを標識する。陽電子放出核種には複数の種類があるが、現在のPET装置では種類が異なる陽電子放出核種で標識したプローブを用いても、1度に単一のプローブしか画像化できなかった。
研究グループは、陽電子放出核種が陽電子に続いて放出する脱励起ガンマ線に注目。陽電子放出核種の種類によって脱励起ガンマ線が持つ固有のエネルギーが異なることから、脱励起ガンマ線まで計測することで異なるプローブを識別できると考えた。
そこで同グループは、脱励起ガンマ線を捉える大型シンチレーション検出器8台をPET装置の両側にリング状に配置したMI-PET装置を開発。マウスを使って実証実験したところ、1度の撮像で2種類のプローブを識別することに成功した。
同成果により、MI-PETを利用することで、1度の検査で複数の疾患を調べることができ、被験者の負担を軽減して診察精度を向上できると見込んでいる。さらに、薬の候補化合物の挙動を周辺環境とともに複数のプローブで複合的に画像化することで、創薬研究に役立てられるとも期待している。
本研究は、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターの福地知則研究員、渡辺恭良チームリーダーと、名古屋大学大学院医学系研究科の山本誠一教授らの共同研究グループによるもの。成果は、米科学雑誌「Medical Physics」オンライン版に同年2月7日に掲載された。
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