菓子缶の小ロット販売で“黒子”脱却、「お菓子のミカタ」が見据えるB2B2C戦略イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(12)(4/4 ページ)

» 2017年02月01日 11時00分 公開
[松永弥生MONOist]
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“黒子”を脱却。企画提案型営業で新たな需要を作り出す

 「お菓子のミカタ」をオープンして3年。

 「缶パッケージで、街の洋菓子屋さんとそのお店のお客さんを笑顔にしたい。その願いがかないました」と清水氏はうれしそうに笑う。

 お菓子のミカタでは、個店オーナー同士で商品企画や包装のアイデアを共有するコミュニティーのサポートを始めた。

 個店は地域をマーケットにしているため、同業者がライバル関係ではなく、仲間として一緒にアイデアを共有しようという雰囲気があるそうだ。

 その背景には、個店オーナーの忙しさがある。商品を作り販売する傍らで、新規商品の企画と試作。季節のイベントキャンペーン。お菓子を引き立てる包装の工夫や店内ポップの準備……。

 個人で全てを対応するのが難しいから、知恵を出し合い共有していく。そんな場の形成を目指している。

「缶パッケージを見て、この缶にはどんなお菓子を詰めよう……とイマジネーションが広がることもあるでしょう。缶が商品企画の役に立ったらうれしいですね」と清水氏はいう。

 パッケージは、不思議な製品だ。パッケージの役割は、商品の魅力を引き立てるためにある。

 消費者の目に最初に入り購入を促す大きなポテンシャルを持つモノなのに、主役はあくまでも“中身”。製菓メーカーのブランドは知られていても、製缶メーカーの名前が表に出ることはない。

 誰もが手にするものなのに、製缶メーカーの存在は“黒子”だ。同社も創業以来、取引先の注文に応じて菓子用の缶を製造してきた。それが個店との取引を通じて、B2B2Cサービスが可能となった。

 そこで得たユーザーの嗜好や反響をデータとして、大手製菓メーカーに対してオリジナル缶の企画提案する流れが生まれてきているそうだ。

 「長年、製菓メーカーとともに仕事をしてきました。缶パッケージで、おいしいお菓子の魅力をもっと伝えるサポートをしていきたい」と、清水氏は従来の製缶メーカーの取引形態であるB2Bから、B2B2Cを見据えた未来を膨らませている。

筆者プロフィール

松永 弥生(まつなが やよい) ライター/電子書籍出版コンサルタント

雑誌の編集、印刷会社でDTP、プログラマーなどの職を経て、ライターに転身。三月兎のペンネームで、関西を中心にロボット関係の記事を執筆してきた。2013年より電子書籍出版に携わり、文章講座 を開催するなど活躍の場を広げている。運営サイト:マイメディア


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