自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は水素ステーションに採用された「耐水素用ゴム材料」を開発した高石工業を紹介する。
未来のクリーンエネルギーとして、水素が注目されている。2014年、経産省が「水素社会実現に向けたロードマップ」を発表。同年末にはトヨタが燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の市販を開始した。2015年11月には「第1回水素エネルギー技術展」が東京ビッグサイトで開催されている。
水素というと燃料電池車が話題となるが、その普及には水素ステーションの整備も欠かせない。水素ステーションにはさまざまな日本企業の最先端技術・製品が集約されているが、その1つとして重要な役割を担っている「耐水素用ゴム材料」を開発したのが大阪府茨木市の高石工業※だ。
※高石工業の「高」は正しくは「はしごだか」ですが、本文中では異体字で表記しています
ゴムパッキンは私達の身の回りにあるあらゆるモノに使われている。車や飛行機、家電製品はもちろん、ボールペンまで。動くモノでゴムパッキンが使われていない機械を探すほうが難しいかもしれない。しかし、目に触れない場所に使われているため、一般のユーザーがゴムパッキンの役割や性能を改めて意識することはほとんどないだろう。
高石工業が製造し、水素ステーションに採用されている「Oリング」も、一見するとどこにでもある黒いゴムのリングだ。しかし、このOリングの素材である「耐水素用ゴム材料」は研究開発から4年以上かけて実用化にこぎ着けた同社の独自技術の結晶だ。本稿では、高石工業のチャレンジを紹介する。
2002年、大阪府に国内初の燃料電池車向けの水素供給ステーションが完成して以来、水素ステーションは、徐々にその数を増やしている。2016年3月1日には、関西初となるサービスステーション一体型の水素ステーション「Dr.Driveセルフ茨木インター店」が開所し、水素の販売を開始した。
高石工業は、そこから南へ車で15分程のところにある。
同社が1946年に創業した時、製造していたのは革パッキンだったという。高石工業がゴムパッキンを扱い始めたのは1953年。1955年にはOリングの製造を開始した。「昔は、新工場の屋上に“Oリングの高石工業"と大きな看板を掲げていました」と“ゴムの伝道師"を自称する同社の取締役の高石純二氏は語る。
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