ゴム業界の常識への挑戦が生んだ、水素ステーション普及の“立役者”イノベーションで戦う中小製造業の舞台裏(7)(4/5 ページ)

» 2016年04月05日 09時00分 公開
[松永弥生MONOist]

「ゴムの配合」は門外不出

 必要なのはこれまで誰も開発したことがないゴムだ。当初は教授側でも必要な設備一式を揃え、自分で材料を配合してカーボンを使わない耐水素用ゴムパッキンの試験片を作ることを検討をしたそうだ。しかし「新素材ゴムの研究」をする前に、「ゴムの作り方を研究」する必要が生じるため、断念せざるを得なかったらしい。

 それというのも、ゴムの配合はゴムメーカーにとって機密事項であり詳細な情報が公開されていないためだ。使用するポリマーの種類、カーボンの種類、使う薬品、それらの配合などすべてが企業にとってはノウハウの固まりだ。「ラーメン屋の店主さんが、スープの作り方を従業員にも教えないのと同じです。門外不出の秘伝です!」と古家さんは笑う。

 当時、高石工業はホームページに力を入れ始めたところで、「ゴムの試作やります!」とトップページに書いていた。それを見つけた教授が、電話をしてきたわけだ。

 同社は、自社で各種材料を配合し、オープンロールという機械でゴムを練ってシートを作っている。材料は定期的に物性試験をしており、ゴム試験片を作る工程は社内業務として行っていた。

オープンロールでゴムを練り、薬品を混ぜ合わせて使用用途に応じたゴムを作る
シート状のゴムを必要なサイズにカットする
金型にゴムを入れて、熱を加えて成形する

 通常、クライアント側から薬品の配合と試験片の形状を指定されれば、新しいゴムでも製造対応は可能だ。そうはいうものの、実際に試作に取りかかるためには、調整が大変だったそうだ。大学研究のため論文として公開されることが前提になっており、閉鎖的なゴム業界で、どこまで技術をオープンにすべきか戸惑いもあったという。

 教授もその辺りは十分配慮し、高石工業が対応しやすいように、配合は全て指定するなどの気遣いをしてくれたという。

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