今回FDAが公開したガイドライン草案では、前述の定義、分類を前提として、SaMDの臨床エビデンスを作るために利用できる適切な評価手法とプロセス、異なるカテゴリーのSaMDに必要な臨床エビデンスのレベル、独立したレビューが重要なカテゴリーおよび重要でないカテゴリーを記述することによって、臨床評価の指針を提供することを目的としている。
SaMDの臨床評価には、以下のような科学的妥当性、分析的妥当性、臨床性能に関するエビデンスを収集・評価する作業が含まれるとしている。
また、SaMDの臨床評価のエビデンスについては、信頼性の観点から、独立したレビューが求められるケースが想定される。今回の草案では、どのような場合にレビューが必要となるかについて、図2のような形で提示している。
どの分類に該当するかの判断については、個別のSaMDの意図とする目的や対象領域に依存するところも多いので、治験・臨床試験実施計画書の策定時に綿密な検討を行っておく必要がある。
なお今回の草案の策定に当たっては、以下のドキュメントを参照している。
参考までに、FDAは「医療機器」としての承認、監視対象となる医療ソフトウェアに関連して、以下のようなガイドライン類を策定、公開している。
施行時期 | ガイドライン名 | 内容 |
---|---|---|
2005年1月 | Guidance for Industry - Cybersecurity for Networked Medical Devices Containing Off-the-Shelf (OTS) Software(関連情報、PDFファイル) | ネットワークに接続される 市販品(OTS)ソフトウェアを組み込んだ医療機器のサイバーセキュリティ対策指針(ソフトウェアパッチなどの手段によるサイバーセキュリティ対策のための修正については医療機器の設計変更とはならない点を明記) |
2005年5月 | Guidance for Industry and FDA Staff - Guidance for the Content of Premarket Submissions for Software Contained in Medical Devices(関連情報、PDFファイル) | 医療機器に含まれるソフトウェア(スタンドアロンソフトウェアを含む)の承認申請手続内容に関する指針 |
2013年9月 | Mobile Medical Applications -Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff | 医療機器としてのモバイル医療アプリケーションの対象範囲や規制要件に関する指針 |
2014年10月 | Content of Premarket Submissions for Management of Cybersecurity in Medical Devices - Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff(関連情報、PDFファイル) | 医療機器のサイバーセキュリティ管理に係る承認申請手続の内容に関する指針 |
2015年2月 | Medical Device Data Systems, Medical Image Storage Devices, and Medical Image Communications Devices - Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff(関連情報、PDFファイル) | 低リスクで規制の適用外となる医療機器データシステム(MDDS)、医用画像保管装置、医用画像通信装置を示した指針 |
2015年2月 | Mobile Medical Applications - Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff(関連情報、PDFファイル) | 前述の医療機器データシステム(MDDS)、医用画像保管装置、医用画像通信装置向けガイドラインを、医療機器としてのモバイル医療アプリケーションに反映させた改正指針 |
表2 米国FDAの医療ソフトウェアに関連する主要なガイドライン類 出典:FDA公開資料を基にヘルスケアクラウド研究会作成(2016年11月) |
加えて、「非医療機器」のソフトウェアを所管するFTCも、2016年4月6日、保健福祉省(HHS)傘下の国家医療IT調整室(ONC)、公民権局(OCR)、食品医薬品局(FDA)と共同で、モバイルヘルスアプリケーション開発者向けのガイドラインを公表している(本連載第13回)。
米国と比較して、スタンドアロンの医療ソフトウェアを対象とした法規制の歴史が浅い日本は、規制当局や国内第三者認証機関の経験、ノウハウが十分に蓄積されておらず、臨床評価に関わる人材の育成も途上段階にあるので、臨床評価手法などレギュラトリーサイエンスの取組が追い付かないのが実情だ。
スタンドアロンの医療ソフトウェア開発に従事する企業やエンジニアにとっては、これら海外との差分を埋める規制対応が高いハードルとなる可能性があるので、海外の最新動向に注意を払う必要がある。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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